専門的な知識や研究内容ではなく、広く学びに携わる・携わった「人」に焦点を当て、どのような経緯を経て今に至るかといったことを探る記事カテゴリー、それが「アカデミックインタビュー」!
第12回のアカデミックインタビューに登場するのは、批評紙『Rhetorica』の発行や”教育”型下宿の経営、さらには島根県立大学にて大学の広報業務を行っている瀬下翔太さん。Twitterを介して知り合ったとしちるが瀬下さんの活動のこれまでとこれからについてお話をうかがいます。
Summary
- 大学では討論型世論調査の研究プロジェクトに関わるも、徐々に批評活動がメインに。きっかけは先生から「お前のやってることは違うよ」と言われたこと。
- 「デザイン×批評」の視点で編集されているのが『Rhetorica』。
- 地域における批評の可能性が具現化したものとして『新復興論』と『空をゆく巨人』を推薦。ここに文化と運動の接点となる「ローカルアクティビズム」がある。
文化運動―新しい「文化的なもの」をつくる活動





『Rhetorica』―デザイン×批評


批評誌『Rhetorica #04』



大学入学前と大学入学後
大学入学前―ネットに育てられたゼロ年代前半




大学入学後―討論型世論調査から批評誌の作成へ







Rhetoricaが生み出した作品デザイン3#1, #2, #3, 津和野デザインリサーチ





就職と鬱と地域






津和野町の様子




2018年9月、高校生の下宿先で生徒らとたわむれる瀬下さん
おすすめ書籍:『新復興論』『空をゆく巨人』






おわりに―問いかけられる「受肉」されたもの
哲学・批評という抽象的なものに携わりながらも、常に実践性を追求する瀬下さんの活動。Share Studyは直接的に批評の延長線上で展開しはじめたメディアではないものの、立ち上げた当時に流行ったシェアリングエコノミーをはじめとした状況下に影響を受けたものであることを思い出した。『Rhetorica』が生まれた原点を社会的状況を交えて伺い知ることができたインタビューとして興味深く、勉強になる機会だった。
瀬下さんの基本的な姿勢を表すと「受肉する運動」をつくることである。「受肉」とはキリストに神が宿ったというように、抽象的なものが「実際に」顕現することを意味している。ハーバーマスが想定した討議空間も、瀬下さんは「受肉しているとは思えない」と言うが、時に放たれるズバッとした意見はさすが批評活動を行っているものだと感じた。 しかし、本人は自らを「編集者」として位置づけているという。高校生や大学生と地域において関わりつつも、ネット空間で言論を発し、コミュニケーションを取り、アナログな批評誌をも作る瀬下さんがこれからどんな「運動」を編集し、示していくのだろうか。
今後の活躍にも注目していきたい。
Footnotes
⇡1 | 「それぞれの町で リレー連載第3回 瀬下翔太×石井雅巳 下宿と津和野 自律した知的探究と親密さについて」POSSE vol.38 P126-133 |
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⇡2 | 『[巻頭座談会]瀬下翔太、板貫城二、太田知也 生き延びてしまった10年―ゼロ年代の後始末』P3, Rherotica #04 |
⇡3 | #1, #2, #3, 津和野デザインリサーチ |
⇡4 | キャシー・チャーマズ(2006)『グラウンデッド・セオリー:客観主義的方法と構成主義的方法』(N.K. デンジン[ら編](2006)『質的研究ハンドブック 2巻 質的研究の設計と戦略』に第7章として収録) |