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アカデミックインタビュー

専門的な知識や研究内容ではなく、広く学びに携わる・携わった「人」に焦点を当て、どのような経緯を経て今に至るかといったことを探る記事カテゴリー、それが「アカデミックインタビュー」!

第7回は、修士課程にて社会工学のアプローチでサービス改善の研究を行っている村上僚さんに

  • 研究分野のサービス工学
  • 研究に至った経緯・背景
  • 創設したプログラミングサークル

などについてお聞きしていきます。

Profile

村上僚さん

専門分野:サービス工学
所属:筑波大学システム情報工学研究科社会工学専攻
興味分野:医療問題
好きなもの:ミスチル、サッカー
創設:プログラミングサークル『Brains』
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サービス工学―科学的アプローチでサービス改善を目指す

こんにちは!筑波大学にて『プログラミングサークル Brains』を立ち上げながらも、サービス工学分野にて研究に勤しむ村上さん。「おしゃべりおじさん」と自称する村上さんからどのようなお話がべらべら語られるか楽しみです。よろしくお願い致します!
村上
えっ、なに?『サービス工学分野にて研究に勤しむ』っていきなりそんな紹介から始めちゃう?まだ授業始まって3日目なんだけど取材されちゃって勝手にしゃべって大丈夫なのかな?
今回の取材はガチガチに専門性の高いお話を聞くのではなくて、これからサービス工学の分野に興味があって学びたい人向けの記事なのでご安心を!
村上
うーん、じゃあそうだね、まず「サービス工学」ってのは何かというと「サービスを工学する」わけだ。世の中はだいたい第三次産業の仕事に溢れていて、多くの人がサービスに関わって生きているわけだよね。
補足すると第一次産業(農業、漁業等)から第二次産業(車の製造等の工業化)、そして第三次産業(サービス:レストラン、病院等)と職業を大きく分けて、国が発展するごとに職に従事する人の割合が増えていくってのがオーソドックスな産業の捉え方がありますよね。
村上
そうだね。で、そのサービスに関して「経験」や「勘」によって運営・意思決定されている場合がけっこー多いんじゃないかって問題意識が出てきた。科学的な考え方を使って「サービスを工学しましょう!」って立場にあるのがサービス工学の分野になりますよね。
ということは、科学、つまりたまたまや勘ではなくてあくまで理論的・論理的に問題を設定して、IT知識だったりエンジニアリングの知見を用いてサービスをよくしていくって分野でいいのかな。
村上
要するに、技術やITを使ってもっと効率よく、よりよいサービスにしていこうとするのがサービス工学だと言えると思うよ。

科学と工学の違い―社会科学における「科学」

ところで、今「工学」ってことばが出たと思うのだけど、科学と工学の違いってなに?
村上
科学に関してはそんなに詳しくないからなんとも言えないけど、工学って言うからには「応用を考えている」とは言えるんじゃないの。基本的にはサイエンスで明かされていった知見を応用するのがエンジニアリングになってるくるんじゃないかな。
でもさ、サービスを向上させる上での、工学における科学ってどこに当たると言えるのかな?
村上
また小難しいことを聞くね君は~。まぁ、その質問を「より理屈・理論に依ったものから、具体的にどのようなものがサービスに活かされているのか」って質問に置き換えていいならば、統計学とか組織論の話とかも中に入ってくると思うし、きちんとデータを集めて仮説検証してというプロセスを辿っているものは科学って言えるんじゃないかな。
それが、いわゆる社会科学って意味での科学ということだよね。
村上
そういうことになるよね。

経営工学の延長線上で始めたサービス工学

サービス工学って分野で、具体的にはどのような研究をやってたりするの?
村上
自分は経営工学の延長線上としてサービス工学を学んでいる最中なんだけど、二つの分野はわりと近しいことをやってるわけね。同じようなくくりとして話すのなら、経営工学の中でも、会計学とか、生産管理とか、組織論とか多岐にわたる分野に別れるのだけれでも、一つ組織論の研究の例を挙げるなら、「病院内で看護師の離職率が高いという問題に対してどうしたらいいか」ってことに看護師の方々に質問して離職に繋がっているであろう変数に対して解決策を提示する、ってことを研究内容にする人もいるね。
なるほど、「離職率を減らすにはどうしたらよいか」って問題を設定して、データを集めて、離職率を高めている要因を探っていきながら対応策を練り上げていくってものがあるんだね。
村上
自分がやった研究としては、まず病院をモデル化して、つまり変数化して「受付、診療、支払」といった一連のプロセスを分析して待ち時間を減らすための効率化を図ったりするとかもあるかな。
村上さんがやった研究を行った動機や背景についてもお聞きしたいのだけど。
村上
卒論について聞かれるの恥ずかしいな~。まぁ、ざっくり言うと「病院の待ち時間を減らしたい」ということで、論文では筑波大学附属病院を対象に、さっきあげた「受付、診療、会計」の待ち時間といった様々なデータの時間を指標にしてモデルを作ったのね。それで、解析を行っていくつかの変数、例えば「患者の平均待ち時間」だとかをシュミレーションで弄くりながら改善点を提示したんだ。
病院内の様々なデータを取って、変数となる指標を見つけて、シュミレートしながら「患者さんの待ち時間の短縮、ひいては受診プロセスの効率化」を探っていったわけだね。
村上
だけど、いろいろ問題点もあってね。

  • あくまで病院をシュミレーションできたという仮定で成り立ってるものだってことで再現度の問題がある
  • 机上の空論に陥りがちになってしまうこともある
  • シュミレーションの上で改善を提示するけど、果たしてそれが実際に現場で応用できるものなのかはやってみないと分からない

ってのがある。だから、これから研究を進めるに当たっては医学の方とかとも共同研究をしていく必要があるよね。

科学的に、根拠に基づいた解決策を探ったわけだけど、他にも他分野と共同して考える必要があるってことだよね。
村上
さらに今回のケースでは問題があってだねー。そもそも最初に病院を設計した当初よりも1.5倍くらい患者さんが多く来てしまっていることもあるそうなのね。だから、想定以上の乖離があって逆に困っていると真面目に言われた。
R.M
「効率化もいいんですけどー、そもそも患者さんを少なくする仕組みも作れないですかね。」って。
真面目に言われたんだ(笑)さすがに、1.5倍も想定以上に来てたら大変だね…
村上
最初、その事態に気づかずに研究を始めてしまったから後々苦労した点だったねこれは。

ヒアリングの大切さ―分野の越境性

いやー、せっかく「待ち時間を減らせれば」と思って研究をスタートさせたのに大変だったね。けど、改めてデータをただ単に取って「効率化を目指す!」ことが正しいわけではなくて、実際に働く人達の声を聞くことが大切だと分かる好例かもしれないねこれは。
村上
ヒアリングは大変なんだよね、サービス工学の分野では。ヒアリングする上でのコストがかかることを教授もよく話してるよ。
ヒアリングのコストって言う具体的にはどんなことを指しているの?
村上
例えば、レストランの動きやスタッフの動き方を改善するために話を聞くとすると、話が脱線することはもちろん、「あの人とあの人のシフトを一緒にすると無駄話が多くなるから別にしたい」だとか些細なものが出て来るのね。でもそれってー、「事の本質なのかな?」って。
必ずしもヒアリングする相手が問題を適切に捉えていない場合もあるってことね。
村上
自分の研究に関しても、ヒアリングをした上で取り掛かっていたら問題設定としてちゃんとやる必要を早々に考えていただろうし、ヒアリングのコストはかかってしまうよね。
これっていわゆる人類学的に定性的な調査をする人たちと協力関係を作ってやるとまた違うと思うんだよね。
村上
そうだねぇ、システムを作るだけじゃなくて、実際に現場に入りながら調査することが得意な人もいるからね。
工学の分野で協力したってケースはないの?
村上
あるのかもしれないけど、自分が知る限りはなかったなー。少なくとも、よく言われる考え方ではないと思う。そもそもで言えば、「社会工学」って分野もいわゆる人文系的な調査を社会科学的に担わせるって側面があるかもね。

経営工学分野に進んだ経緯

そもそもどうして社会工学、経営工学やサービス工学の分野を学ぶ道に進んだの?
村上
最初の出発点は中学生の頃に課題として出せれた社会問題について調査するレポートで医療問題を取り上げたことだったね。医療訴訟だったり、医療の大変さを知る中で、ただゲームにしか使ってなかった自作パソコンを見ながら「こいつをもっと上手く使ってやる方法があるのだろうなー」とね。
きっかけは社会問題を調べてた上で知った医療問題だったんだね。
村上
医療システムを作ってみたくなったら、世の中にはシステムエンジニア(SE)という職業があることを知って、そのSEの人たちをまとめてシステム開発するプロジェクトマネージャー(PM)と言う人がさらにいると。で検索しながらいろいろ調べると、どうやらSEには鬱が多いと。それは現場を知らない人がそうしたマネジメント職に就くこと原因のひとつらしくて、「じゃあ、俺はちゃんと現場も分かったSEなりPMになりたい。よし、経営工学を学ぼう。そうすれば、マネジメント(経営/管理)もエンジニアリング(工学/開発)も両者の立場がわかる。」となっていったというのもあるね。
なるほど。筑波大学で『プログラミングサークル Brains』を作ったのもそうした背景があったからなんだね。
村上
そういうことになるね。ちょっと動き出すのが遅くて4年になってから作ったサークルなんだけど、それまでは自分でプログラミング作ったりビジコン出たりしながら過ごしていたかな。

高校生・大学生に一言

では、最後に高校生や大学生に向けて何か一言あればお願いします。
村上
まず間違いなく言えるのは、今後、経営工学やサービス工学の分野は流行る分野になると思います。もし経営工学的なことに興味があるなら、まずは世の中にどういう課題があるのかを探る・アンテナを張るのが大事だなと。できる範囲でいいから、原因の調査をしてみるってことが重要で、さらに同時にどうすれば改善できるか考えると、自分の足りない点に気づいていくと思う。そこから、勉強していこう・経験を積もうってモチベーションが生まれていくと思うんだ。
なるほど、外の課題を見つけると同時に、自分自身の課題にも転化して目を向けて考えると。
村上
理想と現実のギャップに目を向けるようにしていくってことだね。
いやー、大事だね。
村上
片方だけだと段々と崩れていくと思うんだよね。外部の問題だけ見てる人がいわゆる「意識高い系」と呼ばれる人になってしまいかねないし、逆に内部ばかり見つめてしまうと「専門バカ」と言われてしまうからね。
バランス感覚を身につけるって話になると思うんだけど、難しいよね。自分がとてもよく出来ているというわけじゃないけど。
村上
それね。ただ、まずはそうした現状に目を向けている人自体も多くはないと思うから、そこに何かしらアプローチ取れればと思ってはいるね。
今日はいろいろと面白い話がたくさん聞けました!ありがとうございました!

おすすめの本

村上
自分が専門にしたい分野(サービス工学/ソフトウェア開発)に関連する、取っ掛かりの本なら上の二つの本だけど、コーラン聖書論語も押しておきたい。というのも、何十億人、何千万冊に影響及ぼしている本3つ読んでおけば、大事な抽象的なことは大体扱える。そう思ってる。

編集後記

「おしゃべりおじさん」同士の話はどうしても話が脇にそれがちであったが、そのそれた道も楽しくペラペラとおしゃべりしながらの取材をさせてもらった。

特に印象に残っているのは、病院の待ち時間をより効率的にしてより多くの患者さんの治療に当たろうと研究を行ったのに、必ずしも病院側はそれを望んでいないという状況があったことだ。

物事は常に多面的でさまざまな側面を考慮に入れないと見えてこない・解決できないことがある。

だからこそ、さまざまな人たちと出会い、話し、価値観のぶつかり合いを経験していくことが大事なのだと思う。


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ABOUTこの記事をかいた人

としちる

Share Study代表。日本サッカー協会に所属するコーチを目指して筑波大学体育専門学群を目指すも、受験前に父親が逃亡して宅浪生活2年間を送った後、国際総合学類に入学。タイにて日本語指導と留学も経験。専攻は社会言語学、専門は言説分析。運営サイトは4つ、記事執筆数は250以上、イベント運営に携わった数は50以上(17年8月現在)。「教養」をテーマに活動しています。