ADC2020サポート記事③これまでのADVENT CALENDARのタイプ分類とその記事例

ADVENT CALENDAR 2020では、記事を執筆するにあたっての下記の4つのサポート記事をお届けします。

  1. Web媒体で記事を書く意義とそのスタンス
  2. 記事構成の整え方と見直し方
  3. これまでのADVENT CALENDARのタイプ分類とその記事例
  4. さまざまな問題意識・発見・論点整理とその探求技法

三記事目となる本記事では、これまで二度開催してきたADVENT CALENDARの記事を五のタイプに分類し、その中からピックアップした記事を紹介します。

ADVENT CALENDARにおける過去記事のタイプ分類

解説タイプとその記事例

はじめに紹介するのが、一番数多く該当する「解説タイプ」です。解説タイプとは、学問分野そのものや関連する現象、または自身の研究・活動内容について紹介する記事です。Share Studyでは、さまざまな学問や活動に取り組む人々が入り乱れるような運営を心がけており、ADVENT CALENDARでは多様な専門的・具体的な内容を多用な背景を持った方々がそれを解説してくれています。サポート記事①のはじめに紹介したように、解説タイプの記事を書く際は「(専門的なことでも)高校生に語りかけるつもりで書く」ことや、比較的短くまとめることが有用なWeb記事であることから「伝える情報を絞る・まとめる」ことを心がけると良いでしょう。

解説タイプの記事例として、人文学と理学の記事を紹介します。一つ目の記事が、東京大学の大学院生有志が設立してUT-humanitasさんによる「日常の扉をひらく人文学」です。この記事では、冒頭でUT-humanitasさんが「どのような団体で何を目的・目標として活動しているか」が示されており、さらにその目標が「人文学を自分のこととして考えてもらう」と短くまとめられていることから、読者にとっての記事内容の分かりやすさと引っ掛かりがバランス良く書かれていることが特徴です。どういうことかというと、読者にとって「では人文学とは?」「なぜ自分のこととして考えてもらうのか?」という素朴な疑問でありつつも、重要な点が簡潔に表現されています。全体的にも、記事内容をまとめるにあたっての人文学の紹介と実践的な団体の活動が過不足なくまとまっています。ぜひ「人文学を自分ごとにとは?」と疑問に思った方は記事を読んでみてください。

二つ目の記事が、理論化学領域の研究に取り組む水野雄太さんによる「あらゆる現象の「地図」を描く ―学術の教科書的分断からGoogle Map的統合へ―」です。この記事も同じく、冒頭で水野さんによる記事内容の主張(多用な学知の統合)とそれを補助し、記事のキーワードである「地図」というわかりやすいメタファーが簡潔に示されております。内容としては、自身が専門とする力学系や化学をはじめとした内容がしっかりと示されており、一見すると難解なものに思えます(実際、まじめにそれを理解しようとすると大変です)。しかし、その専門的な内容も冒頭で示された「現象の地図を描く」というコンセプトが重要であることを論述することに向かって丁寧に説明されており、非専門家でもその意図する内容が理解できるようになっています。最後には、そんな「地図」を作るために、読者に向けてさらなる研究や学修の呼びかけがなされている点も、記事としての完成度が高い内容となっています。

経験・反省タイプとその記事例

次は、自身の経験を反省的に振り返ったり、日常を切り取るようなエッセイといった内容に該当する「経験・反省タイプ」です。ADVENT CALENDARでは、専門的に学ぶ学問分野やその研究、あるいは仕事として取り組む活動など、それに関わりが薄い人も多い中で、自身の具体的で日常的な経験をもとにした記事は、書きやすくかつ読みやすい特徴を持つはずです。意外に、自身が「当たり前」と感じている経験・知識・思考は、他者にとっては必ずしも「当たり前」ではありません。そうした、日常感を揺さぶる内容を描くのがこのタイプの特徴とも言えるでしょう。今回、挙げている分類の中では、最も書く型が定まっていないタイプです。そのため、その人の五感・思考の癖が如実に出る記事となり、面白くもなれば、伝わりにくくもなってしまうタイプ(好き嫌いが出る)の記事とも言えそうです。

経験・反省タイプの記事例も二つ挙げます。一つ目が、シェアスタッフのひらっちが卒業論文で必要な調査活動のため、ケニアで過ごした経験をもとにした記事「「障害」って何だろう?」です。この記事では、その経験から「「障害」に対してどのような考え方が必要なのか」と冒頭で投げかけられ、何をもって「障害」とするかは環境によって左右されること、さらに学術的に議論される「障害モデル」についても解説されていきます。この記事は経験的でありつつも、それをメタ的に相対化する学術的知識を検討し、さらにそれを読み進める読者に向けた新たな問いかけと視点の再構築が行われています。卒論に必要な経験を題材としていることからも、単なる経験談で終わることのない、良質な記事の一つだと言えるでしょう。

二つ目の記事は、エッセイ的でありつつも、大学院博士課程で社会学を専門とする谷口悠人さんによる社会学的エッセンスが軽やかに埋め込まれた「しみったれた日常をリフレッシュする風はいつも外からやってくる」です。社会学の中心的な問いの一つでもある「秩序(-逸脱)」を、信仰と祭り、会話、他者と模倣、リズムなどといったキーワードを小気味良くあげていく記事となっています。2019年のテーマ「日常の視点が思わずゆらぐ学習・活動秘話」を体現する記事内容でした。

実践・報告タイプとその記事例

三つ目に紹介するのが「実践・報告タイプ」です。その名の通り、学術的な分析というよりも、具体的な実践活動を報告する記事タイプで、ADVENT CALENDARでも多くの事例が紹介されてきました。

このタイプでは、教育分野を専門として研究・活動に取り組んできた平岡駿さんの記事を紹介します。2018年の記事「地域と交わり、新たな教育の場を作る―長野県小布施町の取り組み」では、大学院を休学し、長野県小布施町で一般社団法人に所属するようになった経緯がまとめられています。この記事では、なぜ休学し、小布施町とはどんな町で、そこで何をしているのか、といった順で丁寧に自身を取り巻く状況が書かれています。続く2019年の記事「地域研修プログラムで起こりうる「這い回る経験主義」とは?」では、地域活性化・地方創生のもとに全国でさまざまに実施される課題解決型研究プログラムにおける問題として「学習そのもの」がおざなりになっていることを、教育哲学者ジョン・デューイの「這い回る経験主義」という概念を紹介しながら、批判的に検討しています。平岡さんは、実践的活動に従事しながらも、そこで起きている出来事を観察・分析する視点を記事としてまとめてきてくれました。

問題意識・問題提起タイプとその記事例

四つ目は、学術分野・社会的現象・人間心理や行為などに対し、批判的に論点をまとめ、主張も展開する「問題意識・問題提起タイプ」です。とりわけ、学問そのものにおける「問い」だけでなく、一人の人間として研究や活動に取り組むにあたって、どのような「問題意識」を持ち、どのようにしてそれに対し応えていくか、あるいは論述・論証していくかは重要なのは言うまでもありません。そのため、この問題意識・問題提起タイプは、ADVENT CALENDARの多くの記事で該当するものでしょう。ADVENT CALENDARでは、必ずしも学術論文のような厳密性や論証スタイルを求めてはおりませんが、このタイプの議論をする場合は、特に学術的な位置づけに従う、もしくは類似した書き方を心がけてみてください。

このタイプでは、三つの記事を紹介します。一つ目が、シェアスタッフであるもっちによる記事「文学部生き残り大作戦β:「である学問」から「する学問」へ」です。この記事では、「文系学部は役に立たねばならない」し、「しかし、現状、役に立っていない」という著者の認識と主張が冒頭にて明示的に展開されています。その上で、そもそも「役に立つ」とは何かを再考し、自身の専門である言語学において提示された議論を取り上げ、さらに政治学者・丸山眞男の「であること/すること」を紹介し、「である」という状態から「する」という行為へと転換することに向けた必要性が述べられていきます。こうした論点を整理しながら、次年度、自身が「学びの場」を作ることが宣言されます。単に、論点を検証したり、問題を浮かび上がらせるというよりも、明示的に著者の価値判断が提示されていること、さらにそれを実現していく施策も宣言されていることがこの記事のポイントです。一年に一度というADVENT CALENDARの性質を上手に用いている事例記事と言えるでしょう。

二つ目の記事は、「「サイエンスコミュニケーションの重要性」とはー実践を通して考える二つの問題点」です。この記事では、サイエンスコミュニケーションが「必要」であるという議論に対し、「①コミュニケーションの問題」、「②科学というテーマの問題」を取り上げながらその検討を施していきます。最後に、短く「サイエンスコミュニケーションは、ただ、テーマが科学というだけで、基本はコミュニケーションである。」と記事が締められていることが印象的で、取り組みの核を批判的に検証、言語化されています。実は、執筆する時間がほとんどない中で、この記事をまとめてもらいました。にも関わらず、実践活動かつ学術的営為の問題を、シンプルな位置づけへと練り直す議論が展開されている良い事例記事です。

三つ目の記事が、「「主体性」ってなんだろう? 文化人類学と地域志向教育と中動態」です。著者は文化人類学を専門とし、まちづくりをテーマに研究・実践に取り組む早川公さんです。先程、紹介した平岡さんによる「地域研修プログラムで起こりうる「這い回る経験主義」とは?」の記事を引き合いにしながら、「まちづくりに取り組む主体(主体性)」を再検討するために、「中動態」という能動でも受動でもない概念を手がかりに論述する記事となっています。人類学は、大雑把に言ってしまうとひたすら「反省」しながら思考を深める「再帰性」を重視する学問です。その人類学に特徴的に現れる、まちづくりに取り組む「主体」を、その「内」から掘り起こしながら、素朴に認識される「人間」そのものが批判的に検討されていきます。明示的な価値判断としての主張をしているわけではないものの、これも立派な問題提起だと言える良い事例です。(この内容をもとにしながら、投稿論文も執筆されたそうです。関心のある方はぜひお読みください。)

アイディアタイプとその記事例

最後に紹介するのが、新規的な考えを編み出す「アイディアタイプ」です。当然、何かを「新しい」と言うためには、何かを「古い」ものとして位置づける必要があります。このタイプは、学術的な議論に関わらず、実践的活動においても新たな、あるいはオルタナティブな考えを作り上げることにも該当します。ある意味、学問における「問い」の設定や、それに対する論述の多くがこの型を取っているとも言えそうです。検証そのものだけでなく、検証にふされていない「何か」があるのであれば、それに向けて概念を練り上げるのもまた一つの手だと言えるでしょう。

手前味噌ですが、Share Study代表としちるが書いた「「ゼミっぽさ」のインターフェース性に関する覚書」を事例として紹介します。この記事では、大学においては素朴に理解される「ゼミ」という関係性においては何がどのように生じているかを再考するため、「ゼミっぽさ」という概念を提示し、具体的な「ゼミ」とその性質としての「ゼミっぽさ」の間で生じる現象を考察しました。具体的には、「対人関係」「学術」「文化」という三つの側面から、特に「日本社会におけるゼミ」について検討しました。

おわりに―調査・分析タイプとは

以上、さまざまなタイプを紹介してきましたが、記事はどれか一つに該当するというよりも、さまざまなタイプと重層的に関連した内容として出来上がっているはずです。これまでの記事も、ぜひ参考にしながらADVENT CALENDARに参加して、自身の考えを練り上げ、学修・研究・活動に活かすものに繋がれば嬉しく思います。

ところで、実はこれまでの記事ではあまりないタイプの記事があります。それが「調査・分析タイプ」です。このタイプの記事は、ある程度、学術的な方法論に則り、調査とその分析を施し、言語化する必要があり、その他の記事以上に、労力がかかる内容となることでしょう。また、さまざまな背景を持つADVENT CALENDARの参加者がそれを理解するためにも、その調査・分析のプロセスを丁寧に紹介する必要があります。そのため、書きにくいタイプの記事と言えます。

しかしながら、より踏み込み、学術的にも興味深い内容となるものは、大なり小なり、この調査・分析のプロセスを経る必要があるはずです。一年に一度、定期的に行うADVENT CALENDARという性質上、労力と時間はかかれど、そういった内容も出てくると、運営者としては嬉しく思います。そこで、そんな記事を心待ちとするために、最後のサポート記事では、そんな調査・分析をする技法を概説的に紹介します。


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