Study Talkとは
学問を題材に、沈黙されていることがらを語り起こしていく教養系のラジオ。「Share Study」を立ち上げたとしちるがパーソナリティとなり、毎月ゲストを迎えて二つのキーワードをもとに語り、学び合います。
キーワード
サイエンスコミュニケーション×キャリア
トークテーマ
アカデミックな媒介を果たす人のキャリアがない件
概要
Study Talk vol.8のゲストは高エネルギー加速器研究機構(KEK:ケック)のサイエンスコミュニケーターとして活動するしょーたさんです。KEKで行われる研究やその専門家と非専門家をつなげる役目なのがサイエンスコミュニケーターだとしょーたさんは語ります。
しょーたさんはKEKに所属しながら、駅前でサインエスカフェを開催する方です。サイエンスコミュニケーションは、「サイエンス」を対象にしたありとあらゆるコミュニケーションを扱います。それゆえに、「何をもってサイエンスコミュニケーションとするのか」ということが、それぞれの立場から多様に語られてきました。
サイエンスコミュニケーターの職として「非正規の職が多い」と語るしょーたさん。科学を専門に勉強しているからといって「研究者」だけが「キャリア」ではないことを伝えられるといいと語ります。「サイエンスコミュニケーション」と「キャリア」をトークのキーワードに、しょーたさんの活動経験や考えをお聞きします
番組
スピーカー
◯としちる
日本サッカー協会に所属するコーチを目指して筑波大学体育専門学群を目指すも、宅浪生活2年間を送った後、国際総合学類に入学。タイにて日本語指導と留学も経験。専攻は言語人類学、専門はディスコース研究。全国47都道府県をめぐり、「これからの大学(学問×地域×教育)を考えるACADEMIC CAMP!」を主催。運営サイトは4つ、記事執筆数は250以上、「教養」をテーマに活動しています。
◯しょーた
愛知県生まれ。ドラクエウォークの冒険ランクは36(12月2日現在)。京都大学大学院にて博士号取得を目指すも、度重なる実験施設の事故などにより断念、科学広報の道へ。2017年につくば科学教育マイスターに認定。素粒子、宇宙をキーワードに、子どもたちを基礎科学の虜にし、世界平和を目論む合気道家。トレードマークは笑顔!
ピックアップ場面
03:08:質問1「仕事・専門にしていることはなんですか?」
所属する研究所で行なっている研究を一般の方にも分かりやすく伝える「科学コミュニケーター」という仕事をしている。しょーたさんにとっての「科学コミュニケーター」とは、「自分が知っている科学の面白さを友達に伝える」くらいのゆるい感覚で捉えている。
04:55:質問2「自分を一言で表すとどんな人?」
だいたい「ニコニコしている」こともあって周りからも「いつも楽しそうな人」と言われるため、一言で自分を表すと「笑顔の人」だと思っている。
06:45 :質問3「最近、一番驚いたことはなんですか?」
思い出したらしゃべります(→質問4へ)。
07:35 :質問4「どんな「学びの流儀」を持っていますか?」
「科学コミュニケーター」はアウトプットばかりしがちだけど、インプットする時間を取れない。質問3で「驚いたこと」をあげられないこととも関連している。
14:00:質問5「テーマについてどんなことを考えましたか?」
16:30:しょーた「サイエンスコミュニケーター職はどこも任期付きが多い印象」
18:55:しょーた「サイエンスコミュニケーターはあくまで専門家と非専門家をくっつけてあげる仕事かなと思っています」
20:29:としちる「Share Studyの活動をしている中で“としちる君がやっていることはサイエンスコミュニケーションだね”と言われることもあるんですけど、“あっ、そうなの?”って最初の頃は思ってしまって」
20:51:しょーた「僕が研究の広報としてやるサイエンスコミュニケーションは“ゼロを1”にするよりも、“1とか10”を持っている人、“ファンをよりファンにする”、楽しませるというつもりでやっている」
21:18:しょーた「興味のない人に興味を持たせるのって“友達からの誘い”だと思ってるんで」
23:28:としちる「サイエンスコミュニケーションという文脈の中でいろんな問題があるわけですよね。例えば、イギリスで起きた狂牛病(BSE)の問題とか」
24:17:しょーた「僕がサイエンスコミュニケーションに関わる個人的なきっかけは、東日本大震災を介して議論された放射線問題だった」
27:48:としちる「ここで話している内容ってサイエンスでもなんでもないじゃないですか。だから僕はこれをサイエンスコミュニケーションって言ってしまえるかというと、ちょっと違和感がある」
31:45:としちる「素朴にコミュニケーションって考えたときには、その時その時に適した振る舞いがある。だから、振る舞いを適切だと判断する状況・条件がある」
32:52:としちる「その条件がうまく噛み合う時として事例があるとしたら、それはもう少し言語化されてもいいのではと思う」
36:05:しょーた「みんな(サイエンスコミュニケーターの)プレイヤーとして忙しくて、全体を見るようなマネージャーがいないかもしれない」
37:28:としちる「今回のテーマで“サイエンス”を媒介するではなく、“アカデミック”な媒介を果たすとあえてしてみました」
38:55:としちる「アカデミックなことのメリットの一つとして、ことばにしてアーカイブしていけること、さらにそのアーカイブの精度を問うことにある」
43:05:としちる「サイエンスコミュニケーションって言うよりも、アカデミックコミュニケーションって言った方が適切じゃない?(サイエンスコミュニケーターの人たちも)やりたいと思っていることってそういうことじゃないの?と」
43:45:しょーた「サイエンスコミュニケーションをやっている人たちは、“サイエンス”って言ってしまっているけど、ゆるくやっている部分もあるから、必ずしも“科学技術”と対象を絞っているわけではない」
45:55:しょーた「みんな見えているんだと思うよ。首が回らないんだろうね」
56:30:しょーた「(サイエンスコミュニケーションを)やってる人はそれで満足しているってのはあると思う。マネージャーになりたいと思わない人もいる。いろんなところでコミュニケーションをすることを楽しいと思う人もいるし」
57:28:しょーた「サイエンスコミュニケーターみたいな人がいないといいんだよね。超理想を言えばだけど」
58:03:としちる「最近僕が学んだことは、あまり“リアリティ”がないことを考えてもしょうがないってことですね」
1:02:08:しょーた「アカデミックコミュニケーションっていい言葉だなと思ったんでもっと広げていきましょう」
1:03:50:としちる「ちゃんと本当に研究したいんだったら“大学院”に行こうぜと言いたいですね。」
1:05:30:としちる「サイエンスコミュニケーションとかアカデミックコミュニケーションに欠けているものは、コミュニケーションしたものを叩かれないんですよ。批判的な議論を経験する土壌がない」
1:0:09:しょーた「政治家にサイエンスコミュニケーションをやっている人が混じるようになっているのはそれなりの指標になるかなと思っています」
1:09:28:しょーた「サイエンスをやっている人が研究者にしかならないというのが問題だと思っていて。中高生に出前授業に行くときに“こういうキャリアもあるよ”っていうのを示せるのは大事だと思う」
1:12:19:としちる「僕が思うにこうして“言語化する”ということは第一条件みたいなもので。下地ができていない状況ってシンボルみたいなものが必要で。どうなるか分からない船に人は乗れないですよね」