バズらない「わたし」が見つけた、「あなた」に気づいた話。

「バズんないよね~」と、twitterの使い手によく言われます。続けて、「バズりたいと思ってないでしょ」とも。わたしはバズらないことに悩んでました。

こんにちは。茨城県つくば市のつくば駅前で月額会員制のコワーキングスペース「up Tsukuba」のおかみ(a.k.a コミュニティマネージャー)をやっている、江本珠理と申します。仕事は、会員さんを守ることです。

人が集う「場」を運営する中で、ハイコンテクスト(多くを語らなくとも文脈を共有する)なことばを交わしてきました。昨日会った人にだけ通じるジョーク、このメンバーだからこそ共有できる話題、そんなコミュニケーションを重んじてきました。だた、それだけでは初対面の方や、知らない人にうまく伝わらないことがあります。

先日、教養系ラジオStudy Talk内でShare Study代表のとしちると会話する中で、「最近驚いたことは?」という質問に対し、「主語がIからYou、Weになったこと」と答えました。今回はその話を、ローカルの実践者に向けて書いてみます。

Study Talk vol.7―つくばではなぜ研究者のつながりが生み出せないか?

2019-11-09

うまく表現できるか…バズらないことに悩んでいた、私なりの「発見」を聞いてください。

えもじゅり

合同会社for here代表社員/つくば駅前コワーキング「up Tsukuba」おかみ/ローカルニュースメディア「つくば経済新聞」編集長。まちに入りながら、地域と関係していく「場」づくりを生業にメディアなどでの記事執筆などを行う。

ADVENT CALENDAR 2019―2日の投稿

12月1日から24日までクリスマスを待つまでに1日に1つカレンダーを空けるという風習に習って、記事を投稿するイベント、それがADVENT CALENDAR!

ローカルプレイヤーとしての視座の変化

学生時代は国際関係学部で中東研究ゼミに所属していました。思考のベースは「人類学」。卒論ではできなかった中東フィールドワークを今、日本のローカルで実践しているとも言えます。だからこそ、「当たり前を疑う」「他の地域と比較検討し、差異を考える」のが癖でした。

そんな学生生活を送ってから、今から4年前に東京都豊島区の池袋でゲストハウスの立ち上げを経験し、同じ豊島区でコワーキングスペースの立ち上げを経て、つくばにやってきました。

つくば駅前、センター地区と呼ばれるエリアで場を構えていますが、生まれは関西。引っ越して2年目です。つくばに来たときから、「つくば」というまちをフィールドにするという明確な意思を持っていました。遠い未来のビジョンはなかったけれど、このまちでやっていかなくてはならないという義務を勝手に負っていました。

なぜ勝手にそんな気持ちを抱いていたのかというと、それまでの「ローカルプレイヤーになれなさ」が原因とも言えます。ゲストハウスでもコワーキングでも、「場」をもつだけではなく、人や地域と関わっていくという意識を持ちながら働いていました。ただの箱モノ・店をやっているのではなく、「池袋」や「豊島区」といった地域と有機的に関わっている、地域のひとと共にある、そんな気持ちがありました。

でも、どこか解せなかった。立ち上げメンバーであっても、わたしは身銭を切っているわけではない。事業における最終的な責任を負えない。そんな負い目・引け目がありました。

だからこそ、じぶんで全て抱えてみたかった。つくばに来たのは、どこでもいいから、じぶんで負える環境に行きたいと思ったから。プルではなく、プッシュ要因が大きかったのです。

そんなわたしの場づくりは、つねに「わたし(I)」から始まります。

「I」「You」「We」の気づきの話

「I」にこだわってきた理由

これは英語を学習してきたからかもしれません。

例えば、まちづくりで良く聞くフレーズ「まちのために」。

これは主語が落ちていて、一体、だれがどうしたいのかがわかりません。補足すると「わたしはまちのために、〇〇したい」ということでしょう。つまり、あなたがなにかをしたいっていう理由がまちというだけになります。主語をあやふやにして、責任の所在をうやむやにしているだけだと批判的に見ていました。

「I want to~」は、誰に否定されるものでもないのになにが怖いのだろう、と。

2018年の10月につくばで立ち上げたコワーキングスペース「up Tsukuba」に関しては、ひたすら「I」を意識してコミュニケーションをしています。わたしは「わたし」を大事にするので、あなたの「I」も大事にしますよ、と。

会員さん「これやってみたい」わたし「やりましょう!」
会員さん「これはどうかと思う」わたし「検討します!」

目の前のひとりひとりの意見を尊重し、否定しない。それを100繰り返せば100通りの「個」がリスペクトされる。そう思ってコミュニケーションしていました。

でも、うすうす気づいていました。「I」を大事にしすぎているのではないかとだから知らないひとにまで届かないんじゃないかと。

「You」「We」への気づき

Share Studyのラジオで話した「最近、驚いたこと」で抽象的な主語の話を挙げたのは、ここ3年ほど抱えている個人的な課題感が根っこにあります。

それは「バズらない」こと。

バズるとは、

バズる
別表記:Buzzる 英語:buzz

短期間で爆発的に話題が広がり、多くの人の耳目や注目を集め、巷を席巻すること、といった意味で用いられる言い回し。主にインターネット上におけるソーシャルメディア等を通じた拡散などについて用いられる。(実用日本語表現辞典)

バズるの意味は、話題にされたい、とか、注目を集めたい。なるほど…。わたしが試行錯誤してきたこの実感を誰かに認めてほしい。そんな気持ちが強かったです。

2019年11月3日、文化の日。東京の池尻大橋で開催されたイベント「LIFE SPEC CO-OP」で、アパレルブランド「ALL YOURS」の代表である木村さんと原さんの対談で、「お客様」の話をしていました。これは「You」の話だ、とふと思ったのです。

「You」だ。今までは、Youの満足を考えてなかった。目の前に現れる顔の見える「I」をYouだと思っていた。

でも、と瞬時に考え直す。うちの会員さんって「You」じゃないんだよな…。

わたしとあなたで、わたしたち。それが、「We」ってことか。

Youは「まだ知らないあなた」。じぶんのキャラを真ん中に関係性を地道に広げてきた今までの「べったり」「どっぷり」なやり方だと、まだ見ぬ「You」へ、飛ばせない。必要としてくれているひとのもとに、届かない。

UserとはYouなんだ…。UXってそういうことか!って思ったし、優れた歌や物語が「まるでじぶんのことを言っているみたいだ!」って気持ちはこういうことかって思ったし、だからup Tsukubaの会員さんはやっぱりWeなんだ。

これが「I」が集う「We」にこだわり、まだ見ぬ「You」へと飛ばせなかった理由だったのか。

と、じぶんがバズらないことにやっと腹落ちしたのです。

「You」に届いた経験

「I」を離れて、「You」に届いたことも実は過去にありました。たとえば、運営しているメディア「つくば経済新聞」でKEKのネコTを取り上げたこと。

これはTシャツを見た瞬間に「これは絶対に好きなひといる!!」と思い、結果、Twitterなどでもたくさんシェアしていただきました。このときは、じぶんの趣味云々というよりは引っかかるひとがいそう、届けたい!という気持ちが強くありました。

そう、だから、結局のところ、「ユーザー」に向けて質をあげることがいちばんのバズへの近道だと改めて思ったのでした。

おわりに

ローカルにはとんでもないひとがごろごろいます。と同時に、そんなに誠実でもないのに有名になっているひともいます。

それはなんでなんだろう、どうして、この人は届かないのだろう、わたしは知っているのに。歯がゆい。

届くのは見せ方がうまいから、と言えばシンプルだけど、その「見せ方」ってなんなんだよ。目の前のひとを大事にしないで、なにが見せ方だ。

なんて不貞腐れていました。

「I」と「You」と「We」が腹落ちした今、それらを使い分けることはきっとできるという確信になりました。この実践の途上が地域でふんばる人に届けばいいなと思います。

ADVENT CALENDAR 2019
テーマ:日常の視点が思わずゆらぐ学習・活動秘話

勉強であれ、研究であれ、仕事であれ、活動であれ、本気で向き合っていると「あっ、ちょっと周りの人と考えがずれてきたな」と思うことってありませんか?深めれば深めるほど、思わぬ考えに至ったり、それが振る舞いに現れたり…

ADVENT CALENDAR 2019のテーマは「日常の視点が思わずゆらぐ学習・活動秘話」です。普段は当たり前のようにこなしている仕事やそれに必要な考えやノウハウも、そのことにとりわけ関わりのない人にとっては「思いもかけない」ことでしょう。今回、一年を振り返る間際の12月、面白い・意義深い考え方や知識、あるいは実際に日常の活動を行う中で見出している応用可能性の高い学びや経験を「ことば」にしてみませんか?

きっと本気で向き合ったときに滲み出てしまう周囲への「違和感」は、誰かにとってはダイヤの原石のような思わぬもので、味わい深いもののはずです。そんな「日常の視点が思わずゆらぐ学習・活動秘話」をお待ちしています!

Writer

合同会社for here代表社員/つくば駅前コワーキング「up Tsukuba」おかみ/ローカルニュースメディア「つくば経済新聞」編集長。まちに入りながら、地域と関係していく「場」づくりを生業にメディアなどでの記事執筆などを行う。