『知の技法』──知的冒険の第一歩!具体と抽象の行き来で学問の技術に迫る必読書

『知の技法』の概要

『知の技法』はサブタイトルに『東京大学教養学部「基礎演習」テキスト』とあるように、出版された当初の1994年当時の東京大学文化系の1年生(第1学期)の学生を対象に編集されたものです。

人文科学や社会科学における学術的な知のあり方や技術が具体例と共に紹介されており、あくまで文系の学生を対象に編まれた書籍ですが、いわゆる理系の学生にとっても日常の身近な出来事を一歩引いて分析するということがどういうことなのかが分かる良書

全体の構成は大きく3つに別れており、

  • 「第Ⅰ部 学問の行為論」では「学問とはなんぞや」というお話
  • 「第Ⅱ部 認識の技術」では14の領域から人文・社会科学において共通するどのように世界を見るかという認識の技術というものを実際の諸問題とリンクしながら紐解くお話
  • 「第Ⅲ部 表現の技術」では実際に論文を書く発表するという活動をする際に役立つ具体的な技術の紹介

となっています。

『知の技法』の基本データ

基本データ

編著:小林康夫/船曳建夫
出版:東京大学出版会
発行年:1994年4月11日

目次

  • はじめに
  • 第I部 学問の行為論―誰のための真理か(小林康夫)
  • 第II部 認識の技術―アクチュアリティと多様なアプローチ
    • [現場のダイナミクス]
      • フィールドワーク―ここから世界を読み始める(中村雄祐)
      • 史料―日本的反逆と正当化の論理(義江彰夫)
      • アンケート―基礎演習を自己検証する(丹野義彦)
    • [言語の論理]
      • 翻訳―作品の声を聞く(柴田元幸)
      • 解釈―漱石テクストの多様な読解可能性(小森陽一)
      • 検索―コンコーダンスが聞く言葉の冒険旅行(高田康成)
      • 構造―ドラゴン・クエストから言語の本質へ(山中桂一)
    • [イメージと情報]
      • レトリック―Madonnaの発見,そしてその彼方(松浦寿輝)
      • 統計―数字を通して「不況」を読む(松原望)
      • モデル―ジャンケンを通して見る意思決定の戦略(高橋伸夫)
      • コンピューティング―選挙のアルゴリズム(山口和紀)
    • [複数の視点]
      • 比較―日本人は猿に見えるか(大澤吉博)
      • アクチュアリティ―「難民」報道の落とし穴(古田元夫)
      • 関係―「地域」を超えて「世界」へ(山影進)
  • 第III部 表現の技術―他者理解から自己表現へ
    • 0.表現するに足る議論とは何か(船曳建夫)
    • 1.論文を書くとはどのようなことか(門脇俊介)
    • 2.論文の作法(門脇俊介)
    • 3.口頭発表の作法と技法(長谷川寿一)
    • 4.テクノロジーの利用(長谷川寿一)
    • 5.調査の方法
  • 結び―「うなずきあい」の18年と訣れて(船曳建夫)

学問をする上でのエッセンスが詰まった一冊

「はじめに」で書かれた一文。

最後に、この本は、教科書に準ずるものとして構想されていますが、しかしけっして半・永久的に通用することを目的としてはいません。逆に、この本の編集の理念は、むしろ「賞味期限」がせいぜい数年であるようなフレッシュな考え方とトピックを集めることにありました。

すでにこの本が世に出てから10年以上の歳月が経ちましたが、そんなことはありません!

確かに、内容として取り上げられたトピックはやや前時代的なものになってしまいました。

しかし、「第Ⅰ部 学問の行為論」にはじまり、一貫して「学問足るものとはなにか」、そして「学問における技術とはなにか」というやや抽象的なことを具体的な事例や説明とともに描いてくれています

トピックとしての内容は古くとも、学問的なあり方や技術というものはそう簡単に廃れるものではないでしょう。

大学1年生向けに書かれたこともあってか内容も下手に小難しい言葉や説明ばかりが並べ立てられるわけでもなく、読みやすい部類に入る本です。

「技術」というと、思い浮かぶのはすぐに役立つ・使えるような具体的な方法論と思われるかもしれませんが、この本で一般的な書籍が解説するような内容は「第Ⅲ部 表現の技術」のみくらいです。

一番ページが割かれているのはむしろ「第Ⅱ部 認識の技術」で、この書籍がこれだけ息が長いのはこの部において、各々がどのようにして実際の資料や事実から問題を見つけ出していったのかということを具体的なものとして示唆してくれていることにあると思います。

読みどころ!―『結び―「うなずきあい」の18年と訣れ」』

そこにはそれぞれの分野における研究者による知的冒険が垣間見れる…そんな良著がこの本、『知の技法』!

一見バラバラに見える内容も、最後の『結び―「うなずきあい」の18年と訣れ』を読むことである一つの方向性として練り上げられたものだということが分かります。

一言で言えば、見出しにもある通り「学問をする上ではうなずきあいをしてきた18年と距離を置く『技術』を身につける必要がある」ということなのですが、ぜひあなたのその目で読んで頂ければと思います。

学問の世界を垣間見る間違い無しの一冊です!

知の技法 東京大学教養学部「基礎演習」テキスト
小林康夫/船曳建夫、1994年4月11日、東京大学出版会

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