地域経済が抱える問題点とその解決方法について


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みんなのShare Studyとは

個々の学問の背景にある、先人たちが切り開いてきた知見。その蓄積の量と質すべてに立ち向かうことは到底ひとりでは成しえない。これまで延々と行われてきた相互的な批判と絶え間ない探求を加速させるためにも、まずはそれぞれが各々の知識を、探求を、そしてその成果を発信してみよう!シェアスタッフだけではなく、読者も投稿に参加できるカテゴリー、それが「みんなのShare Study」です。

こんにちは!堀下恭平(@Kyoheibb_PG)と申します。筑波大学在学中にまちづくりコンサルをメイン事業として起業し、新たな事業として筑波大学すぐそばにコワーキ
ングプレイス「Tsukuba Place Lab」を立ち上げ、プランナーとプレイヤー、そしてプレイヤーの育成を行っております。そんな経験から、現代のコミュニティにおける地域経済において考えている点について書き記します。

Profile

堀下恭平(コミュニティマネージャー)

1990年9月12日、熊本県熊本市生まれ。旅とコーヒーと餃子とエビが大好きです。弱点はくせ毛。 人と人とをつなぎ、人とまちとの関係を紡ぐことをお仕事にしました。「迷ったら全部やる」がモットーで「成功するまで続ければ失敗しない」が信念です。

地域経済が抱える問題点

増田(2014)によると、日本の総人口は2008年をピークに減少に転じ、今後は本格的な人口減少時代に突入する。このまま何も手を打たなければ、2010年に1億2806万人であった人口が、2050年には9708万人に、2100年には4959万人と、わずか100年足らずで現在の約40%となり、明治時代の水準にまで急減すると推計されてます。

さらに、人口が集中した大都市圏では家賃の高さや地域のサポートの希薄さといった子育て環境の厳しさから出生率が地方よりも低いために人口が「生産」されません。その結果、日本全体の人口減少をさらに加速させてゆく「人口のブラックホール現象」が起きている(地方消滅, p33)と言及されています。

そのような観点から2007年7月「少子化社会対策基本法」が制定され、内閣府に「少子化社会対策会議」が設置、さらに2007年の第一次安倍改造内閣以降は、内閣府特命担当大臣(少子化対策担当)を任命し、少子化対策に取り組んできました。ですが、十分な成果をあげられなかったことから政策提言機関として「日本創生会議」が設置され、そのなかに「人口減少問題検討分科会」が設置。各界の学識経験者らとともに、2014年5月に独自の将来推計人口を精査し、「消滅可能性都市」を発表しています。

これらの国の動きに端を発し、「地方創生」に関する研究やレポート、著書が数多く世に出されているが、それら多数の成果物から提言される地域経済が抱える問題点をまとめるならば大きく2つに集約されると考えています。

地域経済のかかえる問題点①ー経済活動の縮小

1つ目は、人口減少にともなう経済活動の縮小の捉え方です。山下(2012)は、2007年の夏に各種メディアが限界集落問題を最重要課題の1つとして多数扱う一方で、独自のフィールドワークにおいては限界集落の住民から「問題がないのが問題だ」という意見が挙がっていることを指摘しました。

ですが、今後も高齢化はとどまることなく進行すると考えられています。そういった時代の中で今後は高齢化の進行により集落が限界を迎え、消滅していくことも十分にありうるでしょう。人口の減少、特に集落あるいは市町村における人口の減少はすなわち自治体の歳入減少に伴う財源規模縮小に直結し、行政サービスの縮小や撤廃へとつながります。それを理由にさらなる人口の流出、特に子育て世代の流出が進行してしまいます。

ですが、人口減少は嘆かねばならない事態なのでしょうか?

人口減少を楽観的に考えてはいけないことと同様に、悲観的に考えすぎるのも問題です。そのことは山下(2014)による『地方消滅の罠』でも増田レポートが必要以上の不安を煽ることよる弊害について多くのページを割いていることからも指摘できるでしょう。いずれにせよ「人口減少」を各人がどうとらえるかが重要です。

人口減少を食い止めることが必ずしも必要だとは考えませんが、人口減少を見据えたまちづくり、担い方の模索こそが重要であると僕は述べたいと思います。つまり、人口減少による経済活動の縮小を見据えた上での政策、諸活動へと現在のすべての取り組みを昇華させる必要性があると考えています。

経済成長甚だしい時代であれば、“なにか”を作ればそれを利用する人も多く、あるいは少なかったとしてもその負債を工面することができたかもしれませんが、現代において赤字物件を維持管理し続けることは難しいことです。経済状況もそうですが、市民がそれを許さないケースもあるでしょう。なぜなら、人口が減少し、利用者が少なくなることが自明であるにもかかわらず新たなハコモノを建設することや、運営計画を策定せずして事業を始めることは人口減少社会という背景を理解し乗り越えようという姿勢には見えないからです。

具体的な資金の仕分けや「選択と集中」に関しては様々な文献から散見できますが、特に藻谷(2013)は, 都会のスマートシティと地方の里山資本主義が車の両輪として機能することこそが、21世紀の諸問題を解決する1つの手段であり、日本というシステム全体が持続可能なものとなっていくために必要不可欠な考え方であると指摘しています。さらに、里山資本主義は安心を買うという原理であり、現代の行き過ぎたマネー資本主義と合わせて取り入れることで、経済発展のみならず、人口減少や高齢化社会への明るい展望も見えてくる、とまとめており、人口減少社会の捉え方について一定の視点を示したほか、そのうえで将来展望も見据えた提言になっています。なお、スマートシティ構想については前述の増田や冨山(2014)も選択と集中による労働生産性向上と生活の利便性向上を狙って、推進すべきであると述べています。

地域経済のかかえる問題点②ーまちづくりにおける主体性

2つ目は、まちづくり分野における主体性の欠如です。山下(2012)は、過疎地域における廃止を検討したスクールバスの運行について、住民主導で全戸共同方式によって解決させた青森県鰺ヶ沢町の例を示し、また山崎(2012)は、自分たちのまちのことを自分たちでマネジメントすることは「当たり前」なことだったはずで、家の前の道の清掃はそこに住む人たちがやっていたものであり、その道自体も地域に住む人たちが協力してつくったことを例に挙げ、現代の住民の主体性の欠如について言及しています。

また、久繁(2010)は、地域再生におけるビジョンとして

  • 「私益より公益」
  • 「経済利益より人との交流」
  • 「立身出世より対等で心地よい交流」
  • 「器より市民が先に尊重される地域づくり」
  • 「市民の地域愛」
  • 「交流を促すスローフード」
  • 「心の在り所となるスポーツクラブ、居場所」

の7つを挙げており、これらに共感してもらうことが重要であるとまとめています。そのうえで、街中につくるスポーツクラブを地域集客の入口と位置づけ、赤字でもいいと考え、スポーツクラブに集まる市民の交流を促し、飲食を主とした関連消費を誘発し地域全体の利益と賑わいを創出する戦略を描くことができると提言しています。ここには自治体に合った戦略を描くことの重要性と主体性、それぞれの重要性を説く指摘であると感じました。戦略を描き将来展望を見据えた上で計画を実行していくことの重要性については今まで述べてきたとおり重要であり、そのうえさらに、計画を実行する主体が誰なのかをはっきりさせなければ、計画はいつまで経っても計画のままであり現実のものとはならないことを暗に示していると考えたからです。

このことから「まちづくり」には綿密な分析と合わせて、実行する担い手の重要性が見えてくるでしょう。山崎が2005年から2008年にかけて、兵庫県姫路市直島町で主宰した「探られる島」プロジェクトのまとめでも示した通り、ソトモノ(スキル人材あるいはカリスマリーダーとほぼ同義)の視点をまちづくりに活かすことはまちづくり人材の流入に加え、既存の価値の再発見に通じます。その点に関しては、曽根原(2013)も同様に、過疎の村・限界集落という自信喪失の状態から、自己の経験が「貴重なもの」であることを、農村の対極にある都市の人に教わることになった例を挙げ、言及しています。

しかし、この2つの例から考えられることとして、まちづくりにおいてソトモノの目線が重要ではあるものの、そのことがすなわち、ソトモノの流入を待つことではありません。住民自らの機運が高まっていない場所では十分な成果は上がらないでしょう。一時的なムーブメントは起せたとしても、継続的に「地域経済の持続可能性」を考えるうえで、住民の自主的な取り組みは必要不可欠であり、それこそが現代において最も欠如しているものではないかと考えます。

解決方法

中村(2014)も指摘する通り、まちの経済の成り立ちを見るにあたり、基盤産業に注目することは必要不可欠でしょう。ですが、そういった視点をある程度持ちつつも、実際に責任と行動をとれる主体こそが最も重要であると考えます。そのため、木下(2015)も指摘する通り、主体的に取り組む個人や団体は「活動」ではなく、「事業」主体者であるべきだと考えます。活動だけでまちを継続的に変えるに至ることは難しいことです。また、そこには公的資金を注入するのではなく、自主財源で事業を展開することが重要です。補助金が切れたら事業も打ち切りになるような脆弱な基盤ではなく、しっかりと「稼げる」仕組みこそが必要です。

さらに、稼いだ資金は新たな事業に再投資することで、地域経済のキャッシュフローをつくり、新たな主体がチャレンジできる場と機運を創り出すことが必要です。まちづくり会社が儲けるのではなく、まち全体がお金を稼ぐ仕組みを事業者が主体的にリスクを取り、そういった個人や団体に追随する形で行政が制度を改正し、新たな事業者がより事業に挑戦できる基盤を作ることで、人材のストックとフローも担保できるのではないでしょうか。

参考・引用文献

木下斉(2015):『稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則』NHK出版新書
冨山和彦(2014):『なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略』PHP新書
久繁哲之介(2010):『地域再生の罠 ―なぜ市民と地方は豊かになれないのか?』ちくま新書
中村良平(2014):『まちづくり構造改革 ―地域経済構造をデザインする』
増田寛也(2014):『地方消滅 ―東京一極集中が招く人口急減』中公新書
藻谷浩介, NHK広島取材班(2013):『里山資本主義 ―日本経済は「安心の原理」で動く』角川oneテーマ
山崎亮(2012):『コミュニティデザインの時代』中公新書
山下祐介(2012):『限界集落の真実 ―過疎の村は消えるか?』ちくま新書
グリーンズ(2012):『ソーシャルデザイン ―社会をつくるグッドアイデア集』朝日出版社
(2015):『世界 第869号』岩波書店
(2013):『農業と経済 第79巻 第1号』昭和堂


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