みなさんは、となりの研究室がどのような研究をしているのか、説明することはできますか?どのような研究が行われているのか知りたいのに、違う研究室の人と研究について話すことにハードルを感じたことはありませんか?感じたことがあるなら、それはもったいないことだと思いませんか?
研究の高度化・専門化が急速に進み、従来の物理・化学・生物・地球科学からさらに細分化され、自分が所属する分野以外の研究について知る機会は非常に少なくなっています。人の交流も限定的で、特に学生やポスドクにとって、研究室メンバー以外と研究の話をする機会は、年に数回の学会だけ、ということもあります。
このような状況を変えるべく、研究分野を越えた人のつながりを生み出そうとする試みは、これまでも行われてきました。以下に具体例を述べたいと思います。
ADVENT CALENDAR 2018―18日の投稿

12月1日から24日までクリスマスを待つまでに1日に1つカレンダーを空けるという風習に習って、記事を投稿するイベント、それがADVENT CALENDAR!
研究分野を越えたつながりの試み
日本学術会議 若手アカデミー
日本学術会議は、内閣総理大臣の下に設立された、日本を代表する科学者の組織であり、人文科学・社会科学・自然科学の全分野にわたる科学者が所属しています。
若手アカデミーは、「若手研究者の発想を社会の諸課題の解決に活かし、将来の学術界を担う若手研究者を育成する」ことを目的に設置され、45歳未満の幅広い分野の研究者によって構成されています(2018年度の構成員名簿)。若手アカデミー内の若手科学者ネットワーク分科会によって、「日本国内の多様な分野で活躍する若手研究者をつなぎ、分野を越えた若手研究者の学際的交流を促進し、学術界ひいては社会の抱える問題点の情報収集・共有を円滑に進めるために」、各学会・協会の若手の会をつなぐメーリングリストが整備され、「若手科学者ネットワーク」がつくられました。若手科学者ネットワークには200を超える団体が登録し、メーリングリストとFacebookグループを通じての意見交換、年に1度のシンポジウムが主な活動となっています(アニュアルレポート2017)。最近では2018年6月4日に、第3回若手科学者サミットが開催されました(日本気象学会による報告)。
このように若手アカデミーは、多様な分野で活躍する若手研究者をつなぐ役割を果たしていますが、構成員は日本学術会議の連携会員である研究室主宰者(准教授以上相当)となっており、学生が自らの声を届けることは難しくなっています。
科学技術社会論夏の学校
「理系・文系・芸術系の枠を越えた議論を通し、新しい発見や長く続く繋がりが生まれること」をめざし、2016年6月に東京大学大学院博士課程の宮本道人さんがSTS Network Japanと共催されたイベントです。「科学を表現する、科学で表現する」というテーマの下、科学と芸術を横断する作品を発表されているスプツニ子!氏、NHKで科学・芸術系番組を手がけられている村松秀氏、科学とメディア・社会の関係を研究されている標葉隆馬氏をゲストに迎え、多様な分野の研究者・学生が集まるイベントとなりました。
しかしながら、2017年、2018年は開催されなかったため、分野を越えた人の繋がりを単発のイベントで終わらせず、継続させる仕組みが求められています。
四若手合同セミナー
生化学若い研究者の会、生物物理若手の会、脳科学若手の会、分子化学若手の会の四つの若手の会の関東支部・関東部会が合同で開催しているセミナーで、毎回分野横断的に研究・活動されている方をゲストに迎えた講演と、四若手の大学院生の交流会を行っています。最近では2018年11月17日にプログレス・テクノロジーズ株式会社の伊藤真氏をゲストに迎え、「機械学習で脳を調べる。機械学習を産業ロボットに使う。」をテーマとしたセミナーが開催されました。
このセミナーは、分子化学若手の会の関東支部を立ち上げられた、当時東京大学大学院博士課程の水野雄太さんが、生化学・生物物理・脳科学の三若手の合同セミナーに参加されたことがきっかけで始まったそうです。
まだ自然科学の一部の領域の学生の集まりにとどまっているため、同じように継続性をもった集まりが、自然科学の他の領域や、人文科学・社会科学の学生にも広まっていくことが期待されます。
メタ若手の会(仮)
このように、研究分野を越えた人のつながりを生み出す試みはこれまでもなされてきましたが、学生やポスドクが自主性をもって参加でき、人文科学・社会科学・自然科学の全分野にわたる枠組みはいまだ存在しません。
この状況を受けて、科学技術社会論夏の学校の主催者の宮本道人さん、四若手合同セミナーの発起人の1人の水野雄太さん、このShare Study代表のとしちるさんたちとともに私が立ち上げたのが、「メタ若手の会(仮)」です。この名前がやや怪しい「メタ若手の会(仮)」ですが、その名の通り、自分の研究をメタ的な一歩引いた視点でみて学問全体の中に位置づけ、学問全体のつながりを取り戻そうとする人たちの集まりです。その意味で、分野の存在を前提にしてその境界を「越える」のではなく、分野の存在を「超えて」学問全体を1枚の地図のようにとらえようとする試みです。まだウェブサイトさえ存在しない集まりですが、月に1・2回程度ミーティングやイベントを行って構想を深めたり、科学技術社会論の専門家の方をお招きして学問のあり方を議論したりなど活発に活動を行っております。
「メタ若手の会(仮)」にご興味を持たれた方は、お気軽に新荘またはとしちるさんにご連絡いただければ幸いです。