多くの人々を魅了するチョコレート。私自身もこの奥深い食べ物に魅了され、多くの書籍やそれに関わる方々と触れてきました。そこで気づいたことはチョコレートを取り巻く「甘い部分」と「苦い部分」の存在。3回に渡って皆様にチョコレートの奥深さをナビゲートできたらと考えております。チョコレートを学ぶことで、学ぶ楽しさを知るきっかけになれば幸いです。
第1回は、私たちが親しんでいる現在のチョコレートの製造についてご案内します。
関連する分野は植物学、地理学、発酵学に工学まで。チョコレートを切り口にその多様な姿とさまざまな事柄との関わりを見ていきましょう。

フードコーディネーター
チョコレートの主原料はカカオ
学名「テオブロマ・カカオ」――神の食べ物といわれるこの植物は、北緯20度から南緯20度で栽培されます。
暑いところを得意としますが直射日光は苦手で、木陰で育てられます。このあたりはコーヒーと植生がとても似ています。
カカオの実がなっているところをイメージしてみてください……おそらく、その想像は実際と違うことでしょう。カカオは幹生果という、木の幹に直接実がなる特徴的でとても珍しい植物です。このような植物は身近なものではイチジクやドリアンがあります。そう言われてもピンとこない人も多いのではないでしょうか。
これは私たちだけでなく昔のヨーロッパの人々も同じで、カカオを直接見た人から伝えられても信じられず、枝になったカカオの実を絵に描き続けていたほどです。
カカオの実(カカオポッド)は品種により大きさが変わりますが長さ15~20センチ程度、直径7~15㎝、重さ250g~1㎏でラグビーボール状をしています。
1個のカカオポッドにカカオ豆が30~40個入っています。
チョコレートは発酵食品
収穫したカカオポッドから取れたカカオ豆は発酵させてから乾燥します。つまり、チョコレートは発酵食品なのです。
伝統的な発酵方法として、木陰を作るために育てられたバナナの葉で包んで発酵させる方法があります。
この時の発酵はアルコール発酵→酢酸発酵と進んでいき、この工程で風味豊かになるといわれています。
乾燥したカカオ豆は世界各国へ輸出されていきます。
チョコレートの美味しさは、砂糖のおかげ?
輸入されたカカオ豆は、下図のような工程を経て、チョコレートとなります。

チョコレートといえば甘く滑らかな口どけが魅力の一つと言えるでしょう。
カカオ豆はすり潰し続けると5μmまで微細な粒子になります。これは私たちの舌で粒子を感じ取れるといわれる10μmよりも小さいため、チョコレートを滑らかに感じることができるのです。
また、カカオ豆の約55%は油脂(カカオバター)で構成されます。
カカオバターは28度で溶けはじめ、30度で完全に溶けます。この素晴らしい特徴により、室温では溶けず、口に入れた際スムースな口どけとなります。
チョコレートやココアが甘いものだから、カカオが甘いと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、カカオ自体は渋みと苦みが強いです。
チョコレートをより魅力的にする欠かせない材料が砂糖。
もし、あなたの手元に70%と書かれたチョコレートがあるとすれば、そのチョコレートの30%は砂糖だと考えてもよいでしょう。
*実際にはバニラなどの香料やミルクチョコレートでは全粉乳なども含まれます。
私自身、純ココアをそれだけでお湯に溶かしたものと、ココア:砂糖=2:1で混ぜてお湯に溶かしたものを飲み比べたことがあります。
後者の方が粉っぽさがとれ、風味が豊かに感じました。牛乳で割らなくても十分美味しいのでぜひお試しください。
健康と美味しさを鑑みて、チョコレートライフを楽しんでください。
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