これから東大で学ぶ人、あるいは過去の私へ―若き東大生の悩みと学び

写真:townphoto.net

この記事を書いているのは、4月の上旬。新入生が大学の門をくぐったばかりのころ。みなさんはどのような希望を抱いて、大学に入学されたでしょうか。私は小学生のころから研究者を志し、充実した研究環境と優秀な仲間を求めて東大に入学しました。しかしそれらは、入学しただけですぐに得られるものではありませんでした。

この記事では、途方もない努力を積み重ねて東大に入学したはいいものの、何か思っていたのと違うと感じている東大生に向けて、私自身の経験をもとに、東大での学びを最大化する方法をお伝えします。それと同時に、純粋に東大に関心を持っている受験生や一般のみなさまにも、内部にいた人間から見た東大のあり方を知っていただけるものになっています。

新庄直明

1994年茨城県鹿嶋市生まれ。小学生のころに、地球温暖化による破滅的なシナリオに衝撃を受け、研究者としての地球温暖化の解決を志す。高校在学時に放課後のゼミで燃料電池を研究したときに感じた疑問がきっかけで、化学に関心を持つ。大学入学後、卒業研究配属前から生産技術研究所および化学専攻の研究室でインターンシップを行い、学会と論文で成果を発表。これまでにロシア、イギリス、ドイツで計4ヶ月の研究を実施。

若き東大生の悩み①︰仲間が見つからない

まず私がぶち当たった壁は、遠慮なく学問の話をぶつけられる同期が意外と少ない、というものでした。東大には、学部2年まで全員が教養学部に所属し、学部2年の前期に3年生以降の所属が決まる「進学選択」という制度があります。これ自体は、入学前の情報が少ない段階で専門を選ばずに済むありがたい制度です。しかし、この制度があることで、受験のときに将来のことを深く考えずに先延ばしにし、とりあえず東大に入っておこう、というスタンスの人が多くいます。そのため、ある学問分野について受験レベル以上に深く知っていて、語れるという人は意外と多くありません。

私は高校生の時に「数理の翼」という全国から数学・理科好きの高校生が集まるイベントや、化学グランプリに参加していて、東大にはそれらの参加者のような人たちばかりが集まると勝手に思っていたので、現実とのギャップにがっかりしてしまった面もあると思います。

ではそのような人が東大にいないかというと、もちろんそんなことはありません。東大でも決して多数派ではないというだけで、確実にいますだからそのような人たちが集まりそうなところに行くのが、一番の近道です。幸い東大にはありとあらゆる興味・趣味に応じた部活動・サークルが存在し、その中には文学研究会地文研究会天文部など、学問を深められるものも多くあります。まずはアンテナを張って、自分の関心に応えてくれそうなところがないか、探してみましょう。

それでも見つからなかったり、見つかっても自分の肌に合わなかったりしたときには、自分で学びを深められる場をつくってしまいましょう。多様な人たちが集まる東大には、同じような関心を持つ人が必ずどこかにいるので、場づくりを始めて発信すれば、自然と共鳴する人が集まってきます。そうやってうまく自分の居場所を見つけて、あるいはつくって、大学を自分の居心地のよい場所に変えてしまいましょう。

若き東大生の悩み②︰研究がなかなかできない

学問について語れる仲間を見つけた私を、さらなる壁が待ち受けていました。研究者を志して東大に入った私ですが、研究室に配属されるのは、進学選択のさらにその先、学部3・4年生になってからでした。他の大学では、最初から学部・学科に分かれている分、専門の勉強や研究を始められるのも早いので、他の大学に進学した友人の話を聞いて、焦りと不安を感じました。

そんなときに、早く研究がしたいという希望を叶えてくれるプログラムを見つけました。駒場リサーチキャンパスにある生産技術研究所が開講している、“UROP (Undergraduate Research Opportunity Program)”です。このプログラムは、(主に教養学部2年生までの)学部学生に、生産技術研究所の研究室で最先端の研究を行う機会を与えるものです。週1回以上研究室に通って、研究室のメンバーに指導してもらいながら、基本的にまだ誰も結果を知らないことについて研究します。半年間のプログラムですが、私はプログラム終了後ももう半年間研究室に通い続けました。そうして得られた結果を、化学系最大の学会である日本化学会春季年会で口頭発表することができ、さらに当時博士課程にいた方が投稿論文に仕上げてくださり、私もその論文に名前を入れていただくことができました。また、理系の多くの学部・学科は、休暇期間中に3日〜1週間程度の超短期の研究室体験プログラムを開講しています。これらのプログラムでは研究のほんの入口しか見られませんが、それぞれの学科の研究室の雰囲気を知り、進学選択の参考にする意味ではオススメです。

私も、理学部化学科への進学を決める前に、理学部化学科と工学部の化学・生命系の学科のこうしたプログラムに参加しました。さらに、これらのプログラムを足がかりに、研究室での研究の経験の機会を与えていただけることもあります。私は、プログラムでお世話になった理学部化学科の研究室にそのあとの半年間通い、最新の研究機器を使って研究させていただきました。もしお世話になった研究室に興味を持ったら、ダメ元で先生に研究を続けさせてもらえるかお願いしてみましょう。

これは個人的な意見ですが、今にして思えば、専門の勉強や研究が始まるのが遅いからといって焦る必要はありませんでした。詰め込みがちにはなりますが、専門の学びの量・質ともに(おそらく)他の大学に劣ることはないと思います。また、専門の勉強や研究に入ると原則として専門のことしか学ばなくなるので、広い視野をもって研究するには、教養学部のうちに幅広い学問に触れておくことが大切だと感じます。先を急がず、いま学べることを全力で学んでください。

おわりに

東大には間違いなく日本の最先端・最高峰の研究設備、研究者、学生が集まっています。しかし、それを活かすことができるかどうかは、みなさん自身の積極性にかかっています。ただ与えられるものをこなすだけの日々を送り、自分たちが恵まれた環境にいることに気づくことさえないまま卒業し、卒業してから気づくも時すでに遅し、という人たちも、残念ながらたくさんいます(自戒もこめて)。

求めるものが得られる場所を探し、あるいは自分でつくり、勇気を出して周りの学生や研究者に声をかけてみてください。自分で行動を起こすことで、みなさんの大学生活は、今日よりきっとよくなると思います。

ADVENT CALENDAR 2019
テーマ:日常の視点が思わずゆらぐ学習・活動秘話

勉強であれ、研究であれ、仕事であれ、活動であれ、本気で向き合っていると「あっ、ちょっと周りの人と考えがずれてきたな」と思うことってありませんか?深めれば深めるほど、思わぬ考えに至ったり、それが振る舞いに現れたり…

ADVENT CALENDAR 2019のテーマは「日常の視点が思わずゆらぐ学習・活動秘話」です。普段は当たり前のようにこなしている仕事やそれに必要な考えやノウハウも、そのことにとりわけ関わりのない人にとっては「思いもかけない」ことでしょう。今回、一年を振り返る間際の12月、面白い・意義深い考え方や知識、あるいは実際に日常の活動を行う中で見出している応用可能性の高い学びや経験を「ことば」にしてみませんか?

きっと本気で向き合ったときに滲み出てしまう周囲への「違和感」は、誰かにとってはダイヤの原石のような思わぬもので、味わい深いもののはずです。そんな「日常の視点が思わずゆらぐ学習・活動秘話」をお待ちしています!

Writer

1994年茨城県鹿嶋市生まれ。小学生のころに、地球温暖化による破滅的なシナリオに衝撃を受け、研究者としての地球温暖化の解決を志す。高校在学時に放課後のゼミで燃料電池を研究したときに感じた疑問がきっかけで、化学に関心を持つ。大学入学後、卒業研究配属前から生産技術研究所および化学専攻の研究室でインターンシップを行い、学会と論文で成果を発表。これまでにロシア、イギリス、ドイツで計4ヶ月の研究を実施。