こんにちは。関西大学の修士課程2年に在籍する渡邉里菜です。
2020年はまさに激動の、変化の激しい1年だったのではないかと思います。今でこそ、無料のセミナーや学会がオンラインで行われる状況も見慣れたものとなってきましたが、2020年が始まった頃にはこんな状況、想像もできなかったですよね。
そんな2020年において、私たち修士の学生はどのように研究を行っていたのでしょうか。
大学に行けないという状況を受けて、大学に行かなければ進まない研究と、そうでない研究の2種類があることに気が付きました。本記事ではその二項対立を詳しく説明し、私自身が感じたこと、考えたことを共有したいと思います。
ADVENT CALENDAR 2020―22日の投稿

12月1日から24日までクリスマスを待つまでに1日に1つカレンダーを空けるという風習に習って、記事を投稿するイベント、それがADVENT CALENDAR!
研究対象と研究手法の2パターン
本記事では、研究対象と研究手法を2パターンに分類して考えます。どちらも、物理的な存在が必要かどうかというのが分類の決め手です。

詳しく説明します。
例えば、研究対象が細胞や医薬品である場合は、自分がその研究対象を物理的に触ることができるというのが研究の必須条件となりますよね。それに対し、例えば言語やデータ解析法(データサイエンス)を研究している学生または研究者は、目に見えない概念や方法を目に見える形(文字など)にして研究しているのです。そもそも私たちが、言語と物理的に同じ場所に存在することなんてできないので、そう考えると、この2つの分類も理解できるのではないでしょうか。
また、研究手法も似た方法で分類を行うことができます。研究室にしか置けないような大きな実験器具を使って実験をする場合があります。これはいわゆる「文系」の研究でも起こり得ることで、私の専攻する翻訳学という学問分野ではアイトラッカー(視線を計測する装置)を使用した実験があります。人間の目の動きを観察、記録し、例えば翻訳者の翻訳プロセスを研究することができます。他にも、実験室にしか置けないような実験器具が必要な研究はたくさんあります。それに対し、パソコンひとつあれば成り立つような研究もあります。私の研究がまさにそうなので、以下でご紹介したいと思います。
私の研究―字幕翻訳
「研究対象」は主に物理的な存在が必要かどうかという点で、「研究手法」は、使用するツールが持ち運び可能かという点で、それぞれ2パターンに分類できることをお話ししました。ここからは私が行っている研究を上記で紹介した分類を基に紹介し、それに対して考えたことをお伝えします。
私の研究テーマは「字幕翻訳」です。もう少し詳しく言うと、字幕翻訳のコーパス(大量の言語データ)を作成し、プロ翻訳者が作成した字幕とアマチュア翻訳者が作成した字幕を比較しています。つまり、私の研究対象は「言語」となります。実際に研究を行うには言語を目に見える形(文字)にしていますが、物理的に触ることのできるものではありません。また、研究手法はエクセルやSPSS(統計ソフト)を使うことになるので、大きな実験器具などは必要としません。
自分の研究を進めるにあたり考えたこと
それで思ったのは、このコロナ禍において対象・手法ともに「②物理的に存在する必要がない、もしくは持ち運び可能なモノ」に分類される私の研究はかなり恵まれていたのかもしれないということです。細胞の研究をしている院生の友だちは、先生や大学に頼んでこっそり研究室に通っていたそうですが、基本的に2020年の春は外出することができず、原則研究室にも通えなくなりました。私はこのコロナ禍の外出自粛を受け、修士課程2年目の春をかなり有意義に過ごすことができた自信があります。
実際には、(他の記事でも言及されている)人とのコミュニケーション不足でメンタル面がしんどくなったり、睡眠を思うように取れなくなったりと弊害もありましたが、アカデミックライフにおいてはかなり充実しました。やるべきこと、やりたいことをすべて部屋の一角からできるのではないかというのは以前から薄々感じていることではありつつも、実際そういった生活を送ってみないと分からないものでした。
オンライン生活の良さ(体験談)
では具体的に、オンライン生活で私が感じた良さを体験談としてご紹介します。同じような生活を体験された方なら共感していただけるのではないでしょうか。
まず、授業がすべてオンラインになったので、資料もオンラインで配布されるようになり、すべてがひとつのデバイス、私の場合は自室の一角に置いてあるPCに集結される形になりました。今までだと紙のレジュメを授業ごとにファイルに分けていて、ファイルを持って行くのを忘れて困ることもあったのですが、すべてがインターネット上やクラウド上にあればそんな心配もありません。スケジュールの管理も簡単になりました。移動時間を考える必要がなく、例えば15時からミーティングがある日でも14時50分くらいまでは自由に過ごせます(私は慣れてくると授業が始まる2分前までウーバーイーツで頼んだタピオカを飲んだりしていました笑)。移動時間がなくなることで単純に作業時間が増え、移動に伴う体の疲れもないため、こなせるタスクの量が増えました。(夜な夜なテキストマイニングのソフトを使って好きなバンドの歌詞を分析したり、動画編集をやってみたりと趣味も充実しました。)現在修士課程2年目の冬なので、もう修士の研究はほとんど終わった状態にありますが、実際に研究が一番大きく進展したのはこの春だったと実感しています。
最後に
最後には研究の話から少しずれてしまいましたが、オンサイト、オンラインのトピックは、研究はもちろん、例えば仕事をする際にも大きくかかわってくる条件であるように感じます。私は卒業後も部屋の一角からすべてできる仕事をする、というのをひとつ目標として掲げています。(主には翻訳関連、他にウェブ系の仕事をしたいと考えています。)業務の本質的なことではないので、物理的な移動を要するかどうかというのは最優先事項にはならないまでも、意思決定をする際のひとつの条件として、これからもっと認知されていくのではないでしょうか。