コロナ禍、公共哲学に何が出来るのか 小さな公共空間の構築

はじめまして。明治大学経営学部公共経営学科二年の島倉雄哉と申します。現在、私は経済学のゼミに所属しつつも、公共哲学という学問領域を主に学修しています1公共哲学の中でも、特にアマルティア・センやジョン・ロールズらの思想を研究しています。

同時に、オンライン授業を補完する学びの場である「大学授業一歩前」 を運営しています。このサイトは様々な先生(大学の先生、予備校の先生、実務系の先生)にそれぞれの眼差しから、学ぶことについての考えや思いをインタビュー形式で投稿をしています。このサイトの運営方針は、私が学修する「公共哲学」を基礎とした活動です。そのため、勉強の仕方を提供することのみを目指したものではありません。公共哲学は、人々が自由に繋がり、普遍的価値観を追求することを目指す科目と私は解釈しています。そこで、「大学授業一歩手前」が目指すものは、学びの公共空間、すなわち、誰にとっても学ぶきっかけと様々な思考が出来る場を作ることです。

ADVENT CALENDAR 2020―12日の投稿

12月1日から24日までクリスマスを待つまでに1日に1つカレンダーを空けるという風習に習って、記事を投稿するイベント、それがADVENT CALENDAR!

公共哲学とな何か

公共哲学という科目は、日本ではマイケル・サンデル教授の白熱教室から多くの人に認知されました。

一方で、日本における公共哲学の学術的文脈としては、山脇直司氏が先駆者でした。彼は公共哲学を、「(1)善き公正な社会を追求するヴィジョンや行動指針(2)現下で起こっている公共的諸問題を市民と共に対等な立場で論じ合い、そこでの要求を政策にリンクさせる実践性の二つの要素をもつ思想であり学問」と定義しています。

山脇直司(2011)『公共哲学からの応答 3.11の衝撃の後で』筑摩選書

この定義に関して私がキーフレーズだと考えているのは、「善き公正な社会を追求する」です。現在、COVID-19や政争によって社会が分断され、特にアメリカでは大統領選で共和党と民主党の間での激しい対立も生じており、何が正解か何が善かという価値観が揺らいでいます。その価値観を再構築し、対立を最小限に抑え、「正義」を実現する学問が公共哲学だと私は強く考えています。

つまり、抽象的な正義や自由そして平和を考え、それらの概念と忍耐強く対峙する学問です。

コロナ禍で公共哲学は何が出来るか

「大学授業一歩前」では、公共哲学の知識を社会に活かすことを目標としています。

2020年4, 5月、新入生の一部から「なんで大学行けないんだよ!オンライン授業より、対面授業の方が絶対良いよ!」という声が出されていました。一方で、この事態は、大学側も始めての経験であり、上手くオンライン授業体制に変更を出来ない、ないしリソース不足からオンライン授業に変更出来ないというとこもあり、さらに新入生は複雑な思いを抱いていたと考えられます。

このような状況は、まさに大学と学生の対立、さらに学びという価値観の揺らぎが生じており、一般社会の縮図となっているのではないでしょうか。

今だからこそ対立を最小限に抑え、自由な学びの価値観を再構築しなければならないと私は思い、「大学授業一歩前」を開始しました。もちろん、私には学問的な業績はありませんし、専門知識も少ないです。ですが、一人でも学びの連帯を構築する人がいれば、きっと大学という自由な学びの場での対立が減らせる一助になると思っています。

意見の対立、例えば、経済学ならば近代経済学とマルクス経済学の対立や政治学ならばリベラリズムとコミュニタリズムの対立といった考えや主義の対立は生じるのが必然であり、そのような対立が新たな学問を生む原動力となっているのは事実です。なので、対立が全て悪では決してないです。

ですが、コロナ禍、四月からの大学を巡る議論を見ると意見の対立を超え、罵り合いや〇〇大学への批判、さらには授業自体への罵声を見るとそれらは、もはや対立ではなく、対決になってしまっているのではないでしょうか。このような対決が生じている要因は大学と学生の距離が遠いからだと考えます。大学とは本来様々な価値観を持つ人が交流し、刺激を受ける場です。それがCOVID-19によって不可能となってしまいました。そこを埋め、様々な考え方をお持ちになっている先生方のお力を借り、大学に本来あるべき価値観の多様性と、交流を実現することを目指し「大学授業一歩前」を構築しました。これが私が行う公共哲学的実践です。

現在はコロナ禍を戦う受験生の力になるべく、大学での学びのリアルを伝える「大学受験一歩前」という記事の公開も開始しました。このnoteは大学が本来ならば行うはずであったオープンキャンパスや学園祭がオンラインでの実施をせざるを得ない状況から、受験生が「大学って何をするところなんだ?」という疑問を少しでも無くしつつ、受験が出来るようになることを目指しています。コロナ禍、受験生の皆さまは私達とは別の見方で大学を見ていると思います。そんな彼らが大学で学びに希望を持ち、熱くそして自由に学べる大学を少しでも身近に感じられることを目指しています。

おわりに

上記でも書いたのですが、現在様々な対立が大学の外でも、内側でも生じており、既存の価値観は揺らいでいます。

そのような時代の中で、公共哲学は普遍的に正しいとされる正義や自由について考え続ける学問であり、私自身もいつの日か現在の対立への答えを導けるように目指しつつ、今は様々な先生方にお力を貸して頂き構築しているプラットフォームをより発展させるように努めてまいります。

今回はShare StudyのADVENT CALENDAR 2020の取り組みにお声をかけて頂きありがとうございました。この記事を読んでくださった皆さまも学ぶ意義や自由といった、抽象的価値観について是非考えてみてください。

学ぶことこそが善き社会を作る礎ではないでしょうか。

Footnotes

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1 公共哲学の中でも、特にアマルティア・センやジョン・ロールズらの思想を研究しています。

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