ペドロジートレーニング参加記

小林耕野

南国、高知県で勝手気ままにに学問を楽しんでいます。日本酒を飲むのが心から大好きです。土佐の日本酒は辛口でとてもおいしいので是非皆さん一度飲んでください。専門は土壌科学ですが、哲学から生物学まで幅広い事に興味を持っています。どうぞ皆さんよろしくお願いします。

ADVENT CALENDAR 2019―24日の投稿

12月1日から24日までクリスマスを待つまでに1日に1つカレンダーを空けるという風習に習って、記事を投稿するイベント、それがADVENT CALENDAR!

ペドロジー、殆ど聞いたことのない方が大半ではないだろうか。ペドロジーとは日本語で土壌生成学、その文字の通り土壌がどのように生成し、変化していくかを明かにする学問分野である。ちなみに、農業において土壌をどの様に活用していくかを明かにする学問分野はエダフォロジーと呼ぶ。

ではどの様な方法を使って土壌が生成し、変化するかを明かにするのだろうか?その基本は土壌断面調査である。土壌断面調査とは1m × 1m × 1mの程度を穴を堀り、その土壌の断面を観察する。掘り終えると、まず層位分けを行う。土壌は一般的に母材(C層)、下層(B層)、表層(A層)で構成される。それに従って層位を分けていくのだ。その後、各層の色、粘着度、構造、根の量などを観察していく。そのため、掘り進めていく時には観察する面を崩さないように掘っていかなければならない。観察する断面の上に足を踏み入れ、めちゃめちゃ怒られるというのが初めて調査をした学生あるあるだ。

このように、知ったように書いているが私は十分な土壌断面調査を行う事はできない。土壌断面調査を行うには何回も調査をこなし、トレーニングを行う必要があるのだ。例えば土壌の、砂、シルト、粘土の量を指先の感覚で測れるようにならなければならない。何回も土壌断面調査を重ね、回数をこなし様々な土壌を観察した経験を重ねる必要があるのだ。そのため、ペドロジー学会ではペドロジスト・トレーニングというものが存在する。そこで自分の土壌断面調査技術の向上のために、私は今年の9月に九州大学で行われたペドロジスト・トレーニングに参加した。

そのペドロジートレーニングコースでは、5000万前の堆積岩を母材とした森林土壌を観察する事ができた。土壌断面調査の方法もいちから教えていただき、また断面の成型や観察のコツを学ぶことができた。また、講義でも土壌断面調査の意義から教えていただき大変勉強になった。

土壌断面の観察結果から私が感じたのは土壌は自分が想像していたスピードよりも速く変化して行く事だ。日本は災害の多い国である。例えば巨大な台風や地震があれば、今の地形も変化していくである。そうすると土壌の置かれた環境も変わり、土壌も変化していく。また、日本は火山国である上に黄砂が毎年やってくる国でもある。それらは土壌の上に堆積し新しい土壌を作っていくだろう。このように土壌が変化していくのだ。

今、私たちの下にあたりまえに存在する土壌は変化していく物だ。それは単なる岩石の破砕物ではなく、母材、生物、気候、時間の影響を受ける地球を構成する一つの圏なのだ。特に日本は火山灰や黄砂の堆積が起こるという世界でも特徴的な環境にある。変化していく土壌、これに注目し土壌がどの様に生成し変化していくかを明らかにしていきたい。

ペドロジストトレーニングは土壌が専門ではなくても参加できる。土壌の生成について学びたい学生の方には是非参加していただきたい。そうする事で土壌学の知見が他の分野に生かされて行くと思う。また土壌学の側も他の学問分野の知見を取り入れて行けるだろう。ぜひ、来年のペドロジストトレーニングで会える事を楽しみにしている。

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