地域志向教育実習プログラムSUIJI-SLPとは―学生視点による「言語化」と「検証」へ

こんにちは、小林耕野です。かつお県こと高知県にある、高知大学に在籍しています。高知には農山漁村が数多くあり、観光に行くとすばらしい景色を見ることができます。

写真1:室戸市佐喜浜町(上流に行くと天然スギがみられる)

高知大学の学生は観光以外でも、授業で農村に行く機会があります。いわゆる、地域志向教育の一環です。そのような授業では農作業体験、イベントの企画、地域の魅力発掘など様々なことが行われています。

私も地域での実習に参加した一人です。2018年の夏季休暇に私はSUIJI-SLP(略称、スイジ)と呼ばれる3週間の地域での実習に参加しました。そこでは、農山村でインドネシアの学生と十日間のフィールドワークを行いました。授業を通して得られたこともありましたが、課題だと感じる事もありました。

プログラムが終わり、得たものや課題を考えているうちに、「結局、SUIJI-SLPで何をやったのか」という疑問がわいてきたのです。何かを得た気がするけどその何かとはなんだろうか。私はその疑問にうまく答えることができませんでした。「何をしたのか」という質問に活動内容を答えるなら「地域に赴きフィールドワークを行った」ですが、これは答えになっていないなと感じました。また、他の先生から「何をしているのかわからない」から評価しにくいという声を聞きました。これは授業に参加した学生が“私たち自身が何をしたか”について「言語化」できていないからでしょう。私たち学生が「言語化」できなければ、授業に関わっていない人がわかるはずがないからです。

これから、さらに地域志向教育が進められるでしょう。しかし、地域志向教育の「言語化」と「検証」はできているのでしょうか?

今回の記事で、私は授業に参加した学生と先生にインタビューを行いSUIJI-SLPを「言語化」します。そして、プログラムを「検証」していきます。そして、地域志向教育を経験した学生側からの「言語化」そして「検証」につなげていければと考えています。

小林耕野

南国、高知県で勝手気ままにに学問を楽しんでいます。日本酒を飲むのが心から大好きです。土佐の日本酒は辛口でとてもおいしいので是非皆さん一度飲んでください。専門は土壌科学ですが、哲学から生物学まで幅広い事に興味を持っています。どうぞ皆さんよろしくお願いします。

SUIJI-SLPプログラム

SUIJI-SLPの概要

まず最初にSUIJI-SLPの説明をしていきます。SUIJI-SLPは“Six University Initiative Japan Indonesia-service learning program”の略です。SUIJI-SLPは日本、インドネシアの両国の大学、高知、愛媛、香川、ガジャマダ、ボゴール農業、ハサヌディン大学の学生が両国の農山村でフィールドワークを行い、農山村を学ぶプログラムです。プログラムの目的は「大学で学んだ知識を体験に生かすとともに、体験から生きた知識を学ぶ」ことです。日本人学生は1, 2年生が多く、インドネシアの学生は様々です。SUIJI-SLPにはベーシックコースとアドバンスドの二つのコースがあります。前者は一回目、後者は二回目に参加できるコースです。

学生は最初の年はベーシックコースの学生として参加し、次の年はアドバンスドコースの学生として参加します。コースは別ですが、実習は同じチームとして活動します。図1の通り、ベーシックコースは「まみれる」、「掘り下げる」こと目標にし、アドバンスドコースは「行動を起こす」、「共に作る」を目標にしています。

図 1:SUIJI-SLPのステップと目標

SUIJI-SLPの活動内容

実習地は季節によって異なり、夏は日本、春はインドネシアで行います。実習期間は約三週間です。そのうち十日間が地域でのフィールドワークに当てられます。活動する農山村は複数です。日本では愛媛県に三箇所、香川県に二箇所、高知県に二箇所で行います。フィールドでは体験活動と街歩きをします。体験活動は農家さんの手伝いや祭りへの参加などがあげられます。これらの活動内容は上級生の生徒が地域の人、教員と相談しながら決めます。学生の意見が実習にも反映されるため、活動の自由度はかなり高くなっています。

また、教育的な位置づけとしては、地域に対する奉仕活動と実習経験による学びを両立させる、サービスラーニングプログラムと呼ばれるものです。そのため、アドバンスドコースの学生が主導して大学を介した学生による地域での奉仕活動を行います。活動の最終日には地域の方へ向けた成果発表を行います。最後に複数の場所で活動した学生が集まり最終プレゼンを行います。日本では愛媛県の大洲に愛媛、香川、高知で活動した学生が集まります。もちろん、毎日の会議は英語で行い、最終プレゼンテーションも英語で行います。

詳しくはSUIJIのホームページ、愛媛大学のSUIJIのホームページ、SUIJIのFacebookを見てください。

写真2:SUIJI-SLPの実習風景1SUIJIプログラムホームページ │ サービスラーニングプログラム  [2019年1月27日確認]

図2:SUIJI-programの位置づけ 2SUIJIプログラムホームページ [2019年1月27日確認]

おわりに

以上がSUIJI-SLPの概要です。次の記事からはSUIJI-SLPに参加した学生、携わる先生にインタビューをしていきます。SUIJI-SLPのより具体的な活動内容、活動中に学生が感じたこと、その後の学生生活への影響について言語化していきつつ、プログラムの意義や課題について、一学生である僕の視点から検証をしていきたいと思います。地域志向教育が進められる中、先生だけでなく学生たちが意見を交わすきっかけになれば幸いです。

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