元生物講師がまちづくり会社を学生起業し、生態系を学び考え実践し続けた8年間。

筑波大在学中の2011年12月にフリーランスの商店街活性化コンサルとして、2014年12月25日に商店街と同時に行政へのまちづくりコンサルとして株式会社しびっくぱわーを起業した堀下恭平と申します。開業してから7年、最初の起業からも4年という節目に、新たな価値創造すなわちイノベーションを創出すべくオープンコミュニティを形成し、場づくりに取り組む中で、感じ、考え、行動してきたことをまとめさせていただきます。

堀下恭平

1990年9月12日生まれ。熊本県熊本市出身。つくば市在住。
株式会社しびっくぱわー 代表取締役 / 合同会社for here 共同代表 / 一般社団法人 筑波フューチャーファンディング – TFF 理事 / グリーンバードつくばリーダー

筑波大学2年次にコミュニティ拠点として学生カフェ創設にかかわったことからまちづくり分野に興味を持ち、下妻市や水戸市、横浜市などの商店街活性化にかかわった後、2年間京都で武者修行のため移住。関西を中心に行政計画策定に係るコンサルの仕事を始め、のちに起業。つくばに戻り大学生をしながら、2016年12月コワーキングプレイスTsukuba Place Labを創業。オープンから2年が経ち、企画運営したイベントは630本以上、来場者は12,000人を突破。2018年10月よりつくば駅前コワーキングup Tsukubaを創業。グリーンバードつくばや筑波フューチャーファンディング – TFFの活動と連動させて地方の価値が高まる仕掛けづくりに挑戦中。「迷ったら全部やる」がモットーで「成功するまで続ければ失敗しない」が信念。

ADVENT CALENDAR 2018―24日の投稿

12月1日から24日までクリスマスを待つまでに1日に1つカレンダーを空けるという風習に習って、記事を投稿するイベント、それがADVENT CALENDAR!

背景

2年ほど前にも“Open Share Study”に『地域経済が抱える問題点とその解決方法について』という記事を投稿させていただきました。

今でこそ、いわゆるまちづくり領域や都市計画領域、果ては政治経済領域などを“活動拠点”にしていますが、学生時代は農学部の端くれであり、学生時代には6年間、生物講師として多くの生徒に教えてきたという背景があります。現在、日々コミュニティの現場に自分の身を投じ、中長期的な展望のもとに日々を積み上げていく土台には、生物学的視点がある、と勝手に感じていますので、今回は生物学(集団遺伝学)的視座から見たコミュニティ形成について、個人的な考えをまとめてみたいと思います。

まず背景として、私の基本的な行動原理やモチベーションは2年前と変わらないと感じているのですが、環境の変化としては、Tsukuba Place Lab(Lab)という場を利活用したコミュニティ形成及びイベント企画運営から派生し、日本初大学密着型のクラウドファンディングプラットフォームである筑波フューチャーファンディング(TFF)の理事に就任し、誰かの“やりたい”という挑戦に対してクラウドファンディングにおける資金調達を中心としたインキュベーション施策を展開したり、仲間と別法人となる合同会社for hereを起業し2つ目となるコワーキングup Tsukubaをつくば駅前に創設したりと、よりつくばという地域に根差したコミュニティ形成を事業の中心に据えるようになったことです。

今の活動につながる最初のできごとについても触れておきたいと思います。

大学入学時には学習塾を起業しようと考えていましたが、大学1年生の終わりを迎える2011年3月11日に起きた「東日本大震災」をきっかけに考えが大きく変わりました。人と人のつながりこそが大切なのではないかと痛感し、大学2年生の春に人と人とが繋がる場としてspice up cafe ALDORを仲間とともに立ち上げました。以降はフリーランスとして行っていた商店街の活性化事業と併せて広くまちづくり分野におけるコンサルティング業務を統合し、2014年12月25日(ちょうど4年前!)に株式会社しびっくぱわーを起業しました。地方自治体の総合計画や地方創生総合戦略、観光計画、子ども子育て支援事業計画、障害福祉計画、介護保険事業計画などを作成する際のアドバイザーというわかりづらいことをお仕事にしてきました。市民向けワークショップの企画運営や市民アンケート調査の設計分析、議会資料作成などが本業務です。全国の50自治体ほどにお仕事としてかかわらせていただく中で感じたことが1つありました。それは、人口に関係なくまちの最たる課題の1つにプレイヤーがいないことが必ず挙げられるということ。

行政コンサルとして目先の問題を解決するプランナーの役割ももちろん大切だけれども、ほんの少し少し先の未来を作るプレイヤーを育てたいと思いました。そのためにはまず自分自身もプレイヤーとして成長する必要があると考え、在学中に起業してLabを茨城県つくば市に立ち上げました。

以降2年間でLabを中心に650本以上のイベントを企画運営登壇し、延べ12,000人とLabで出会い、実人数としても1,000人以上の方々が利用してくださる場に育ちました。異なる価値観が出会う、アイデアを共有できる場。”人と人とを繋ぎ、やりたいことを実現していくための場”を提供したいと考え実行してきたことが、1つカタチになって、今でも多くの方々にご利用いただけていることは本当にありがたいことです。

そんな中にあって、日々出会う人と人、モノ、カネ、情報などを結び付ける活動を積み重ねていくことで、人と人との関係性のレイヤーが多層化及び複雑化していくことが場の価値を最大限まで引き上げるのでは?という1つの仮説に至りました。

AさんとBさんという2人の友人関係だけが場にあるとき、まったく関係のないCさんが“場に来た”としても、関係性を紡ぎづらい。けれども、そこにBさんとCさんの共通の趣味が可視化されたときに、AさんとBさんの友人関係というレイヤーにないBさんとCさんの趣味レイヤーが同時に存在することになる。さらにAさんとCさんの出身地が同じと分かった時、さらに別レイヤーが足される、そういった関係性の可視化を多層的かつ複雑系的に紡ぎ出すことが、私の仕事となっています。

地域に開かれた学びの場を創出し維持し続けるということ

『異なる価値観が出会う、アイデアを共有できる場。”人と人とを繋ぎ、やりたいことを実現していくための場”』を提供するために、今年の春、4月からチャレンジしてきた取り組みとして「co+Labゼミ ~みんなで学ぶ、まちづくり~」があります。これは筑波大学 土地利用研究室 の先生と協働して、学びの場を大学からまちなかへ展開してみよう、というものです。開かれた学びの場をつくることで、あらゆる角度からつくばのまちに関わる入り口をつくることを目的として「みんなで学ぶ、みんなの場」というコンセプトを掲げはじめました。

参加者は各回30名前後で、半数が学生、半数が一般市民(その中には市役所の担当課職員や市議会議員、関係企業や団体の方、他分野の研究者など多様な方が集いました)という割合でした。

具体的な活動としては、ジェイン・ジェイコブズ著『アメリカ大都市の死と生の輪読とそこから見えてきた課題や展望について、つくば市(特に中心市街地としてのつくばセンターエリア)を例にとり、学んだことを実際にまちなかに当てはめて学びを深化させるとともに活かすというものです。また、開校後につくば市から「中心市街地まちづくりヴィジョン(案)」が提出されたため、パブリックコメントについての講義を実施した後、実際に参加者全員が建設的かつ現実的な意見を表明し、パブリックコメントを提出してみたり、つくばセンターエリアのまち歩きを企画運営してみたりと、小さく早く活動してきました。また、10月以降は私にとって2つ目となるコワーキングをつくば駅前に開設したことで、より“まちなか”に場を持つことができましたので、co+Labゼミの取り組みもまた駅前で展開しているところです。

まちづくり領域、特につくばセンターエリアを1つの地点として、まちの在り方やそこを取り巻く様々な環境について学ぶ学問だからこそ、まちなかへ開いていくことそのものに意義がある、という考えのもと今後もしっかりと多層的にコミュニティを形成していけるよう取り組んでいるところです。

集団遺伝学的視点から考える地域の生態系

さて、以上の具体的取り組みはすべて、コワーキングスペースという“場”で展開してきたことです。そもそも、なぜオープンスペースでそれらを開催する必要があるのか、延いては果たしてどうしてイノベーションを起こすことができると考えているのか、という大前提に、ここで立ち返りたいと思います。

そもそも、イノベーションとは、経済学者シュンペーターによって、著書『経済発展の理論』で初めて定義されています。とは言え、厳密には「Innovation」という単語は使っておらず、new combination(新結合)という言葉を使っています。シュンペーターはイノベーションを次の5つに分類しています。

  1. 新しい財貨の生産
  2. 新しい生産方法の導入
  3. 新しい販売先の開拓
  4. 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
  5. 新しい組織の実現(独占の形成やその打破)

これらのうちどれか1つでも当てはまれば、イノベーションと言うことができる、ということです。

上記シュンペーターの定義に対して、マネジメントの父と称されるドラッカーは、企業が行うことは2つしかないとしたうえで、その2つをイノベーションマーケティングと定義しています。なぜならば、企業の最終目的は顧客創造であり、顧客を創造するには、新しいことをはじめ(イノベーション)、それを顧客に伝える(マーケティング)しかないからであると。すなわち、マネジメント的視点が強いドラッカーによるとイノベーションとはすなわち新しいことをはじめることです。さらに詳細を見ると、ドラッカーの定義では、マーケティングは4Pから成り立っています。

  1. プロダクト(商品)
  2. プライス(価格)
  3. プレイス(場所)
  4. プロモーション(販売促進)

この4つのすべてに、マーケティングの同等の存在としてイノベーションが関わってくる、と説きます。つまり、”顧客にどう伝えるか(マーケティング)”もしくは”どうやって新しい事を実施するか(イノベーション)”の2軸から、商品、価格、場所、販促に関する意識決定ができる、ということです。

話をイノベーションに戻しましょう。新結合であれ、新しいことを実施することであれ、イノベーションを起こすために必要なことの片鱗が上記内容からわかります。それは、

  1. 既知の知識や経験をより多く知っておくほうが有利である
  2. はじまりそのものは、ある程度の偶発性を伴うことである

ということです。

そもそも「“新”結合」させるためには新たな結合をつくる必要があり、そのおおもとにはすでに確立された知識や技術、サービス、人が必要です。また、どういった「新しいことがはじまる」のかは、結局のところどんな新結合が起きるかに依拠しており、偶然性が大きく影響を及ぼしているだろうということです。

であればこそ、人と人とが、情報と情報とが、意見と意見とが、まったくの偶然性を伴って出会い、ぶつかり、結合するような、そんな場と仕組みを設計したいと思ったのです。

上記考えに至ったのは、他ならない私自身における、考えの新結合からです。大学時代に学んでいた生物学(集団遺伝学)の知識全国の地方自治体におけるまちづくり活動について学び、そしてなにより実際に場を持って体感したことによる“新結合”です

場における生態系について考えるとき、いつも思い出すのは集団遺伝学における法則の1つ「ハーディ・ワインベルグの法則」です。

ハーディ・ワインベルグの法則

個体群内に対立遺伝子Aとaがあり、A遺伝子の遺伝子頻度(遺伝子プールに占める対立遺伝子の割合)をp、a遺伝子の遺伝子頻度をp’とする(p+p’=1)。この個体群が作る次世代の個体群の遺伝子型の分離比は AA:Aa:aa=p2:2pp’:p’2 となる。遺伝子型がAAとなるのは、遺伝子プールから集めた2個の対立遺伝子が両方ともAだった場合で、そうなる確率はp×p=p2 になる。遺伝子型がAaとなるのは、集めた2個の対立遺伝子がA1個とa1個だった場合だが、この場合は、母親からAをもらってAaになる場合と、父親からAをもらってAaになる場合の2通りがあり、その結果分離比は2pp’になる。

この次世代集団のA遺伝子の遺伝子頻度をq、a遺伝子の遺伝子頻度をq’とする。q算出の分母となる遺伝子プール内の遺伝子総数は、各個体がAあるいはa遺伝子のいずれかを合計2個ずつ持つので、(p2+2pp’+p’2)×2 となる。分子を与える遺伝子プール内のA遺伝子の総数は、遺伝子型AAの個体が2個ずつ、Aaの個体が1個ずつのA遺伝子を持つので、p2×2+2pp’となる。従って、q=(p2×2+2pp’)÷{(p2+2pp’+p’2)×2}=pとなる(q’についても同様にq’=p’となる)。

回りくどい表現になってしまったので簡単にひとことでまとめるならば一定の条件下において、時間が経ち表面上は変化しているように感じられても、その実、本質は変わっていないとでも言いましょうか。例えばA型の人とB型の人だけが存在している鎖国中の島国があったとして、鎖国し続けてさえいれば100年後も200年後も、1000年後もA型を為す遺伝子AとB型を為す遺伝子Bの割合は変わらない、というものです。もちろん、鎖国を解いた結果O型の人が入国したり、A型の人だけが大量に移住してきたならば、この理論は成り立ちません。ということで、このハーディ・ワインベルグの法則が成り立つための条件をご紹介いたします。

ハーディ・ワインベルグの法則が成り立つための条件

  1. 自由交配である。(性選択がない)
  2. 個体群内の個体数は十分に大きい。
  3. 他の個体群との間で個体の流出入がない。
  4. 突然変異が起こらない。
  5. 遺伝子型や表現型の違いによる自然選択がない。

上記5つの条件が揃っているときに、ハーディ・ワインベルグの法則は成立します。

ハーディ・ワインベルグの法則に従う限り遺伝子頻度は安定しているということが分かったところで、話を再度、イノベーション延いては「集団遺伝学的視点から考える地域の生態系」に戻しましょう。

イノベーションとは新結合であり、新たな知見や経験、体験と出会った時にはじめて生まれるものであることは先述の通りです。そして、遺伝子頻度すなわちものごとの本質が“安定”するための条件もわかりました。つまり、イノベーションを起こすためには上記ハーディ・ワインベルグの法則が成り立つための条件をことごとく外していけばいい、そう考えています。

① 自由交配である、② 個体群内の個体数は十分に大きい、の2条件については、これは生物学的見解を示す際に必要とされた条件であるため、今回はもちろん対象外ではありますが…。

③ 他の個体群との間で個体の流出入がない、④ 突然変異が起こらない、⑤ 遺伝子型や表現型の違いによる自然選択がない、の3点についてむしろ、多くの考えや主義思想、人種、年代、性別などとにかく多様な“個体”すなわち人が出入りすることで常に新しい風が吹き健全な土台ができあがります。さらに突拍子もない意見やいわゆる常識にとらわれない考え方や行動そのものがここでいう突然変異であり、それらを排他する行為こそが自然選択です。突然変異を受け入れ、自然選択すなわち場のオーナーやスタッフなどの主観によるジャッジメントを入れない、それこそが場の多様性を担保し、延いてはイノベーションを起こすことができる“素地が出来上がる”ことにつながると考えています。

偶然性をつくりだすことで、イノベーションを起こすことができるそう信じています。

今回こうしてShare Studyに寄稿させていただいたのも、2年間Labスタッフを務めてくれた青山君が主宰するメディアであるということ、そしてふだん私自身がアカデミックとは遠いところで活動しているからこそ、なにかしら“新結合”が起きるのではないかな?と思うからです。機会をいただきありがとうございます。お読みいただきましたみなさまに何かしら新しい知見や体験があったのならば幸甚です。その先は、ぜひ一緒にTsukuru Place Labやup Tsukubaでお話ししましょう。

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研究者向けにWebサイトの制作や学術メディア『Share Study』を運営。シンプルかつスタイリッシュなデザイン制作を得意とし、学び合いの文化を耕すことを掲げています。最安5万円からサイトを制作!学生向けに情報を整理し、研究内容をわかりやすく外部へ発信するサポートをいたします。

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